雑賀技術研究所(和歌山市黒田)が紫外線を当ててミカンが持つ抗菌力を高め、腐敗を抑制する装置を静岡県などと開発し、今秋に生産現場で検証を始める。雑賀技研の前田千枝子さんは「生産者にとって腐敗は大きな悩み。製品化し、他の産地にも広まっていけば」と願っている。

雑賀技研が装置開発

 果物、野菜の品質測定装置や光殺菌装置の開発を手掛ける雑賀技研。以前より生産者らからミカンの廃棄につながる腐敗の相談を受け、2017年に静岡の県農林技術研究所、三ヶ日町農協と共同研究を始めた。

 この中でかんきつ類の果皮に生成する抗菌物質「スコパロン」に着目。紫外線を当て生成を促し、腐敗を減らす条件を探るため、3万5000個のミカンを照射したものとしていないものに分け、夏や冬を想定した異なる様々な条件で保管し、腐敗率を検証した。

 この結果、無照射のものは42%が腐ったのに対し、照射したものは19%に留まった。スコパロンは照射後、3日かけて含有量が増え2週間ほど維持するため、輸送中も効果が期待できるほか、糖度や酸度、色の変化もないことが分かった。

 装置はミカンをベルトコンベヤーの内部で数秒間照射する形状にし、秋には県内で検証を行い、製品化を目指す。前田さんは「使いやすいものになるよう、生産者の声を取り入れていきます。ゆくゆくは他のかんきつ類へも応用できるかもしれません」とみている。

写真=数秒の照射でスコパロンの生成を促す

(ニュース和歌山/2019年6月29日更新)