貴志川線の乗客増と地域活性化を目指し和歌山電鐵は8月11日、〝キシカイセイ〟プロジェクトを発表した。「起死」と「貴志」をかけた企画名で、新たに考えた10事業に取り組んでゆく。小嶋光信社長は「培った再生と経営のノウハウを駆使し、鉄道再生だけでなく地域活性化と一体になった第2の創業に取り組む。これまでに続き、熱い応援をお願いします」と呼びかけている。

駅命名権や枕木オーナー募集

 年間5億円もの赤字を出した貴志川線を2006年に南海電鉄から引き継いだ和歌山電鐵。いちご電車、うめ星電車といったユニークな車両や猫のたま駅長人気で、年間利用客は05年度の192万人から15年度は232万人に増えた。行政から運行補助金を10年間受け、廃線の危機を乗り切ることができた。

 行政の補助金は16年以降、鉄道施設の更新に特化したものに変わり、自力営業での再建を目指すことに。初年度は黒字だったものの、ここ2年は少子高齢化で通勤、通学客が減り、海外観光客も減少、台風や酷暑による出控えなどで18年度の利用客は引き継ぎ後初めて210万人を割り、一昨年と昨年の台風被害の復旧工事費もかかり、累計5000万円の赤字を抱えている。

 プロジェクトは、9月1日㊐まで実施中の「迷探偵コンナンクイズラリー」、新聞風に電鐵の現状を紹介した5枚つづり切符の「あと5回きっぷ」の販売、枕木オーナーや副駅名の命名権の募集、登録有形文化財である伊太祈曽車庫の観光資源化、キャッシュレス決済への対応など。

 小嶋社長は「構造的な少子高齢化を観光客などで補うのでは鉄道の持続的発展は難しいと実証でき、『公有民営』に取り組まなければならない時期に来た。安定的な永続運行に向け、多くの人に関心を寄せてもらい、主体的にかかわってもらえるよう取り組んでゆく」と意気込んでいる。

写真=プロジェクトを発表する小嶋社長(右)

(ニュース和歌山/2019年8月24日更新)