高齢者が気楽に集える「オレンジカフェ」(認知症カフェ)が多様な展開を見せている。国が2020年度までに全市町村での設置を呼びかける同カフェは、社会福祉法人、NPOなど運営者は様々で、認知症に理解のあるスタッフが参加者を迎える。会話を楽しむところやレクリエーション主体のところなど内容はカフェにより異なるが、高齢者と取り巻く人のつながりを築き、認知症とともにある試みが続いている。

認知症の人も地域の人も〜〝集いの場〟開設広がる

 認知症カフェは、12年に厚生労働省が示した認知症施策の計画で初めて示され、3年後の新計画で20年度までに全市町村での設立を掲げた。今年3月現在、全国で7023ヵ所あり、和歌山県内は和歌山市、海南市、紀の川市など17市町36ヵ所で開設され、和歌山市の7ヵ所が最も多い。

 「ゆるやかな形で高齢者、認知症の人、家族とだれでも来やすく、触れ合え、情報交換ができるのが大切」と県長寿社会課。認知症地域支援推進員がかかわり、国からの交付金を得て運営する例は多いが、大半は福祉関係者が施設などを会場にボランティアに近い形で企画している。

 和歌山市島の地域包括支援センター川永では毎月第1・3土曜に喜成会が「ふれあいカフェ」を開いている。センターの一室を喫茶店風にし、午前10時から午後4時まで開放。コーヒー1杯100円で〝開店〟だ。

 午前中は女性のグループ、午後は男性でにぎわうことが多い。喜成会地域福祉支援室の門脇次彦さんは「知らない人同士が友だちになれるのが何より。地域づくりの一環として始め、最近は催しの情報が口コミで伝わるほどになりました」とほほ笑む。

 毎回必ず来る77歳の女性は「一人で暮らしていて家では話し相手がいない。ここへ来たら楽しいです」。79歳の女性は「夫が病気で、ストレスがたまりがち。ここで同年代と話すと解消になります」と笑う。毎回、高齢者を迎える同会地域交流センター長の寺井政子さんは「話し相手に徹します。生活のリズムにし、カフェへ通うのが運動になるという方もいます。来た方がセンターに相談しやすくなるようにも心がけています」と語る。

 やまぐちささえ愛センター(同市里)で2ヵ月に1回開く「にじいろカフェ」は、実行委員会形式なのが特徴だ。医師を含む5事業所の12人が委員となり、カフェを運営している。

 医師の講話と催し、季節の菓子が人気で、認知症の人、家族、介護関連者ら約40人が参加する。今月で20回目を迎え、実行委員の岩橋典久さんは「参加者数は予想以上。喫茶店の方が『力になりたい』と協力してくれ、一方で認知症の方が参加者をもてなす姿が見られるようになりました」と成果を語る。「実行委形式だと法人の垣根を越え職種連携ができ、顔がつながる。カフェは最終的に地域住民が担うのが目標で、他の地域にカフェを広げる力にもなりたい」と望む。

 こんな中、県内4ヵ所でカフェ開設に関わる認知症の人と家族の会県支部は新たな展開を試みる。同会は65歳以下で発症する若年性認知症の問題が全国的に深刻化しつつあるのを受け、7月から当事者と家族に向けたカフェを始めた。

 毎月第2日曜午後1時から同市新堀東のほっと生活館しんぼりで、若年性認知症支援コーディネーターがサポートする。梅本靖子代表は「介護世代が若年性認知症になると、家族は危機に陥る。交流場所は欠かせません。和歌山では認知症自体への理解がまだまだで、まず意識を変えねばならない」と話している。

 カフェの開設場所、日時は各市町へ。

写真=川永地区の「ふれあいカフェ」。参加者との会話を弾ませる喜成会の寺井さん(前列左)

(ニュース和歌山/2019年8月24日更新)