和歌浦干潟や名草山を一望できる水上楼閣「観海閣」が復元に向け新たに整備される。初代紀州藩主徳川頼宣ゆかりの建物だが、老朽化が進み、一昨年の台風21号でも被害を受けていた。絶景の宝庫として日本遺産となった和歌の浦整備の一環で、和歌山県都市政策課は「かつての観海閣に近い形で復元し、和歌浦の魅力を向上させたい」と話している。

妹背山 観海閣復元再建へ〜和歌の浦活性化目指す

 2010年に国名勝、17年に日本遺産に認定された和歌の浦。観海閣は玉津島神社東の妹背山東端で、頼宣の母、養珠院ゆかりの多宝塔、明治、大正に栄えた旅館、あしべ屋の妹背山別荘とともにいにしえの風情を今に伝えている。

 1648年〜52年の慶安年間、頼宣による妹背山周辺整備にともない、和歌の浦の風景を眺め、紀三井寺を仰ぐ施設として建てられた。

 江戸時代の地誌書『紀伊国名所図会』には、西国巡礼の人や庶民がくつろぐ様子が描かれ(写真下)、和歌山市立博物館元館長の額田雅裕さんは「そもそも風景を眺めるために造った所。近くに紀三井寺側へ渡る船着き場があり、ターミナル的な場としてにぎわいがありました」と語る。

 明治〜大正にかけ絵葉書で発信され、全国に知られたが、1961年の第二室戸台風で流出。翌年に延床面積58平方㍍、高さ7㍍で再建された。

『和歌浦の風景』より

 近年、老朽化が進み、一昨年の台風21号の影響もあり、県は整備を計画。今年度中に解体に向けた設計と工事、新築の基本設計を行い、来年度に着工する。完成目標は2022年で、遺構や明治・大正の写真を参考に可能な限り復元を図り、木造での整備を軸に計画を進める。

 日本遺産となった和歌の浦は現在、市が玉津島隣接地でガイダンス施設を計画、付近の道路も整備を進める。また、県は今年度、一昨年の台風21号で破損した三断橋の補修を進め、加えて和歌浦地区活性化計画を検討する方向だ。
 あしべ屋妹背山別荘の活用を図る建築家の西本直子さんは「水辺に張り出した懸け造りの観海閣は紀三井寺と空間をつなぐ場として面白く、残すべき建物」とし、「台風や地震対策は欠かせず、30年に1度の修復を前提にした木造との考え方もある。技術や意匠より建築と地域の歴史の観点が成功には欠かせない。和歌の浦の歴史の中で妹背山をどんな場と考えるのか。共有することが大事」とみる。

 毎秋に「竹燈夜in妹背山」を開いてきた玉津島保存会の渋谷高秀会長は「日が暮れると、ろうそくの灯りが水辺に落ち、おもむき深い。万葉の景観がそのまま残るこの場所にかつての形で復元されるのは素晴らしい。再びにぎわう場所になれば」と望んでいる。

写真=干潟に張り出した懸け造りが特徴

(ニュース和歌山/2020年7月11日更新)