和歌山市の久保智和さん アレルギー患者ら注目

 小麦アレルギーを持つ人や糖尿病患者から注目されている古代小麦を和歌山県内で初めて、和歌山市で農業を営む久保智和さんが農薬や肥料を使わない自然農法で栽培している。「アレルギーがあっても発症しづらい性質がある小麦なので、食の選択肢が広がります。育てるのに手間はかかりますが、古代小麦の可能性を消費者にも生産者にも知ってほしい」と意気込んでいる。

 元々、建設会社に勤めていた久保さんが古代小麦に出合ったのは5年前。妻、詩奈子さんのアトピー性皮膚炎が悪化したのがきっかけだった。添加物が入った食品をやめ、無農薬野菜に変えるなど食習慣や生活環境を見直した結果、半年で症状が軽くなった。

 農業の経験はなかったが、だれもが安心して食べられる作物の必要性と、微生物が生きる土で育てる自然栽培に魅了され、3年前に退社。古代小麦は大豆を育てた後の窒素や微生物が豊かな土を利用し、二毛作で栽培している。このほか、米や20種類の野菜を育て、産直市場やオーガニック店などで販売する。

 古代小麦は、広く出回る現代小麦とグルテンの質が異なり、小麦アレルギーを持つ人が口にしても約9割が発症しないとの結果がヨーロッパで出ている。また、体内でデンプンがゆっくりと分解されるため、血糖値の急激な上昇を抑えられ、糖尿病や高血糖症の人にも体の負担が少ない。

 久保さんは「アレルギーの子がいる家庭で、『古代小麦で作ったクッキーやパンをみんなで食べられた』と聞き、大きなやりがいを感じます。大地にとっても作物にとっても持続可能な循環の中で、安定して収穫できるよう、工夫を続けたい」と張り切っている。

 「自然力栽培久保農家フェイスブック」かメール(tomokunn0602@gmail.com)。

写真=収穫した古代小麦はパンにして販売

(ニュース和歌山/2020年8月1日更新)