パティシエ、福祉事業所、販路開拓者がチームを組むスイーツブランド「KANOWA」。2013年から魅力あるスイーツを生み、福祉事業所の工賃アップを図る。順調だったが、新型コロナウイルスの影響で販売店が閉まり、売り上げが減少。新たに生菓子の通信販売に乗り出し、顧客に直接販売する形に出た。お菓子プロデューサーの山添利也さん(45)は「それぞれが強みを発揮すればチームとして力が出る。工賃アップの全国モデルになりたい」と望む。

福祉事業所 工賃アップに〜コロナ打開 レモンケーキ開発

 山添さんはかつて和歌山市内のイタリアンレストラン「シエスタ」を経営。地元食材を使ったチーズケーキを07年にネットショップ楽天市場で総合1位にし、菓子プロデュースに実績がある。

 山添さんと福祉の世界を結びつけたのは長男(13)の存在。3歳の時、自閉症の診断を受け、現在は支援学校に通う。同じ立場の親同士で語り合うのは「子どもが学校を出たらどうするか」だ。

 その中で福祉事業所について知った。菓子製造を事業にする所が多く、設備は非常に充実している。ただ職員はパティシエでも営業マンでもないため売り上げも工賃も上がらない。「菓子作りのプロと作業所をつなぎ、魅力的なスイーツを自らが営業すれば、利益も工賃も上がるのでは…」。山添さんは考えた。

 13年に新たに会社コンフォートを設立した山添さんはこの考えを実現すべく、「KANOWA」を立ち上げた。同市で洋菓子店「パティスリーエルヴェ」を営むパティシエの橋本憲司さん(46)と連携し、ミカンとカキ両方の花からミツバチが集めた紀の川市の蜜を素材に焼き菓子を開発、「奇跡バウム」が誕生した。

 製造は橋本さんの指導のうえ、海南市の福祉事業所「おかし工房sawa」が担当。山添さんが営業し、取り扱い30店舗のヒット商品となった。

 新商品も次々と生み出し、既存商品の営業を強化した。同事業所の拔井友希所長(42)は「大きいのは利用者の成長。自分で確認をし、人に教えるようになりました」。工賃も「7年前から月1万円以上上がりました。障害者年金と工賃で自立して暮らせる額にまでゆければ」と語る。

 順調だったブランドを襲ったのが新型コロナ。販売店が閉まり、仕事は激減した。「sawa」の売り上げは一時前年比75%にまで落ち込んだ。

 現状の打開に山添さんは通信販売に着目した。通信販売は実店舗がなく、感染拡大が起きても収益の下支えになる。また全国が市場となり、「いいものなら高額でも買う人」へアピールできる。通信販売で人気のある生菓子を、予算を度外視し作る挑戦に出た。

 生まれたのは「紀州プレミアム生レモンケーキ」。首都圏で流通している広川町産の「紀州レモン」を素材に作り上げた。橋本さんは「想像を超えた酸味です。和歌山では食べやすさに気を配りますが、今回はひたすらおいしく濃いものを目指しました」。レモン搾汁は「sawa」が、レモンのフリーズドライなどは海南市の福祉事業所「あすなろ」が行う。

 9月1日にクラウドファンディングで販売を始めたところ、予定の200個が完売。一般の通信販売は12月の予定だ。

 山添さんは「他府県で同じような試みに協力できればうれしい。和歌山の豊かな果物の発信にも一役買いたいです」と話している。

写真=左から山添さん、sawaの皆さん、橋本さん、拔井さん

(ニュース和歌山/2020年9月26日更新)