平安時代の初め、816年に弘法大師空海が真言密教の道場を開いてから1200年目を迎えた高野山で、4月2日(木)〜5月21日(木)の50日間、開創記念大法会が営まれる。期間中、御本尊の御開帳や秘宝の特別展が行われ、僧侶や信者、観光客ら国内外から約25万人の来訪が見込まれる。主催する総本山金剛峯寺の執行で宗務総長公室長の山口文章さん(写真)に、催しの見どころと、1200年の時を積み重ねた高野山への思いを尋ねた。
——開創法会はどのようなことをしますか。
高野山内やふもとの寺社に僧侶が集まり、開創当時に思いをはせて壮大な祈りの儀式を行います。期間中は毎日あり、観光客も外から見学していただけます。特に4月2日の「中門落慶大曼荼羅供(だいまんだらく)」は盛大で、僧侶400人が金剛峯寺から壇上伽藍(がらん)まで歩きます。当日は壇上伽藍に再建した中門で、横綱の白鵬(はくほう)さんと日馬富士(はるまふじ)さんが地固めする奉納土俵入りが披露されます。他にも壇上伽藍金堂と、金剛峯寺持仏の御本尊の御開帳は必見。特に壇上伽藍金堂の秘仏は史上初公開で、歴史的瞬間に立ち会ったと言えるほど希少です。高野山の文化財を保存する霊宝館でも三大秘宝が特別公開されますし、5月には高野山のシンボル、根本大塔に3D映像を映し出すプロジェクションマッピングを行います。多彩な色で真言密教のエネルギーをダイナミックに表現します。
——開創法会にはどのような意味がありますか。
開創以来、50年ごとに行うもので今回が24度目。僧侶にとっては、過去50年を振り返り、今後50年をどのように向かっていけばよいかを確認する定期試験のようなものだと思っています。昔の記録を見ると、50年前の交通手段は鉄道で、100年前は何もないんですね。でも今は車中心で、50年後には自家用飛行機で高野山に降り立っているかもしれない。このような科学技術はめまぐるしく変化しても、高野山の信仰や自然は1200年前から変わっていないんです。これらを再確認して継承することに開創法会の意味があります。
——今回の節目に、目標としていることは。
東日本大震災以降、立証できる科学より、絆やつながりといった見えないものの力が見直され、価値観が大きく変わる過渡期にいます。多くの人が今、大事にしようとしている思いを吸収し、次の50年に向けて宗教として何ができるか、その可能性を模索すべきだと思っています。
——最後に、訪れる人に感じてほしいことは。
杉の巨木や仏像、戦国武将の墓など高野山の至る所に時の流れが刻まれています。ただ文化財として見るのでなく、連綿と受け継がれた供養する心や、凝縮された祈祷(きとう)のエネルギーをこの地で体感してほしいです。「どうして1200年前に弘法大師がここを選んだのか」。その答えがきっと分かります。
金堂 御本尊特別開帳 期間:4月2日〜5月21日
期間:4月2日〜5月21日
高野山霊宝館 特別展 場所:高野山霊宝館
開創大法会開白 中門落慶大曼荼羅供と奉納土俵入り 日時:4月2日 午前9時
プロジェクションマッピング (写真右〈携帯など上〉) 期間:5月12日(火)〜5月17日(日) 午後7時20分、8時10分の2回 |
(ニュース和歌山2015年3月28日号より)