2015103102_tatumitosho

 海南市重根の巽小学校図書室は休み時間になると多くの子どもたちが集まる。お目当ては2学期から導入された本の貸し借りを管理する機械だ。実はこの機械、図書ボランティアの栄川誠さん(63)が手作りしたシステムで、蔵書約1万冊を他のボランティアと共に半年かけてデータ化し完成させた。新しく導入された機械に子どもたちは興味津々で、藤田直子校長は「機械を使いたいと図書委員を希望する子が増えました。読んだ冊数やページもすぐ見られ、読書へのモチベーション向上につながります」と喜んでいる。

 システムはパソコンと読み取り機を使い、表計算などで利用されるソフト「エクセル」を活用。子どもたちが手軽に使えるよう、極力シンプルなデザインに仕上げ、本と名簿のバーコードを読み取れば画面に情報が表示され、貸し出しと返却が記録される。図書委員の田村はるなさん(6年)は「お店のレジみたいで楽しい。検索ではジャンルごとに分けている棚の色も表示されるので、探しやすくなりました」。

 特徴は、本の貸し出し数や児童それぞれが読んだ累計のページ数も画面にランキングで表示される点。子どもたちの読書意欲を刺激し、人気の傾向なども分かりやすくなった。栄川さんは「データから、子どもたちが読書好きになる取り組みも展開できます」と今後を描く。

 約30年前に数年間、電機機器メーカーで技術者としてソフトウェアの設計などに携わり、その後は同小近くの郵便局長として長年勤め、仕事に役立つソフトを自作してきた経験が生きた。退職後は青少年の育成活動に参加し、昨年、図書ボランティアに加わった。傷んだ本の修繕や読み聞かせを行う活動の中、学校が新たに本を購入する際に、同じ本がないか探すのに苦労していることを知った。メンバーから蔵書一覧のデータ化ができないかと相談を受け、2ヵ月かけてシステムを作り上げた。

 栄川さんは「業者の機械を司書や教師が使うのが一般的ですが、ボランティアが作り、子どもが使えるシステムは珍しいのでは。自分たちで本を管理するようになれば、本を大切に使ってくれるはず」と期待している。

写真=子どもたちの様子を見守る栄川さん(中央)

(ニュース和歌山2015年10月31日号掲載)