和歌山で44年ぶりに行われた国体は、念願の天皇杯を獲得し、成功裏に終えることができました。国体を目標に進めてきた道路整備も、高速はすさみまで延伸し、京奈和自動車道は阪和自動車道まで、そして、第二阪和国道は大阪まで延伸のメドが立ちました。一方、南海トラフ地震と津波被害が懸念される中、災害対策をさらに推し進める必要があり、また、少子高齢化が急激に進む中、人口減対策も力を入れなければなりません。県政を引っ張る仁坂吉伸知事に、髙垣善信ニュース和歌山編集長が今年の総括と和歌山の将来展望について聞きました。

 

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国体で得た自信と誇り「元気な和歌山」につなげたい

髙垣編集長(以下、髙垣) 長期間準備に取り組まれてきた国体は大成功でした。

仁坂県知事(以下、仁坂) 「躍動と歓喜、そして絆」をスローガンに、県民一体となり創り上げた素晴らしい「紀の国わかやま国体・わかやま大会」になりました。国体は念願の男女総合優勝、大会も127個のメダルを獲得でき、感動と勇気を与えてくれました。

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 国体の式典前演技では、観客の皆さんも一緒に『よろこびの歌』の大合唱、大演奏が鳴り響いた場面や、わかやま大会の閉会式で堀内孝雄さんの歌に合わせて、県選手とともに観客席で家族の皆さんが踊っている姿が印象に残っています。大変感動しました。

 今後、スポーツ熱の高揚や県民運動の盛り上がり、この自信や誇りを元気な和歌山づくりにつなげていきたいと思います。

写真上=和歌山県の旗を先頭に、力強く行進する県選手団

 

髙垣 道路整備もかなり進みました。今後、重点整備はどこをお考えでしょうか。

2015122689_keinawa仁坂 紀勢自動車道「田辺~すさみ間」、京奈和自動車道「紀の川~岩出間」が国体までに開通し、着実に整備は進んでいます。紀伊半島一周高速道路は県民のチャンスの保障や大規模災害への備えとして、京奈和自動車道や府県間道路は関西圏の拡大による経済活性化に資するものとして不可欠です。今後も京奈和自動車道「岩出~和歌山間」など残る区間や、これらを補完する内陸部ネットワークの早期整備を推進します。

写真=紀の川ICより西側が開通した京奈和自動車道

 

「稲むらの火」故事から「世界津波の日」制定へ 和歌山発の防災取り組み

 髙垣 和歌山にかかわりの深い11月5日が「世界津波の日」に決まりました。また、近年は段階的に災害対策を強化されており、特に「災害犠牲者ゼロ」の方針を掲げ、県・国土強靱化計画を策定されました。

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仁坂 広村(現・広川町)の濱口梧陵翁が「稲むらの火」で村人を津波被害から救ったのが11月5日。私たちの取り組みが結実し、この故事に由来する日が「世界津波の日」になったことを大変うれしく思います。「世界津波の日」が津波に対する国際社会の意識を高め、防災の備えを行い津波による犠牲者をなくすことを大きく期待しています。

 また、「災害犠牲者ゼロ」を基本姿勢に、南海トラフ地震とこれに伴う津波に対し、避難困難地域を解消するための避難路・避難施設の整備、堤防強化のほか、迅速な避難を促すため県の津波予測システムによる情報伝達などを進めています。

 さらに、紀伊半島大水害の教訓を踏まえ、市町村が避難勧告を出す際の判断材料となる県独自の降水予測情報の提供や、中小河川の総合的な洪水対策、土砂災害対策など県土の強靱化を進めます。

写真=広川町役場前に建つ濱口梧陵翁の像

 

市街地拡散抑制し まちなかに活気を

髙垣 長期人口ビジョンの中で、「新しい人の流れの創造」を強調されています。

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仁坂 移住希望者を呼び込むため、家賃・物価の安さ、通勤時間の短さなど暮らしやすさを広く発信すると共に、ワンストップ相談窓口「わかやま定住サポートセンター」、移住相談会や現地体験会、空き家バンクなど様々な「移住・定住大作戦」を展開します。

 また、奨励金を活用した企業誘致、県立医科大学薬学部の新設や看護大学誘致により、県内に「働く場」「学ぶ場」を確保し、新たな「人の流れ」を創造します。

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髙垣 まちづくりについて、県と和歌山市が協力して「都市の再生」に取り組まれています。

仁坂 和歌山市では人口集中地区が45年間で約3倍に拡大する一方、地区内の人口密度は約6割に低下。市街地の拡散と空洞化が進展し、まちなかの活気が失われています。今後は、都市計画の適切な運用による市街化の抑制や、市街化調整区域など郊外部の優良農地を確保しつつ、さらに、既成市街地を再開発などでもう一度再生し、活気にあふれ様々な都市生活が楽しめる和歌山を目指します。

写真=仁坂知事。髙垣編集長

 

「水の国」テーマに 新キャンペーン

 髙垣 国内外から和歌山を訪れる人が急増しました。

仁坂 和歌山は「木の国」と言われますが、木や森を育む「水」に注目し、清流・滝・温泉スポットと、そこでの体験観光、また、醤油・酒・酢などの食、水の造形でもある南紀熊野ジオパークなど、「水の国」をテーマに世界遺産ブランドと組み合わせたキャンペーンを実施します。さらに、世界遺産の追加登録や、日本遺産、また、世界ジオパークの認定を目指す取り組みを始め、新たな魅力づくりと情報発信を通して将来につながる持続可能な観光地づくりを考えています。

 外国人観光客については、各国・地域の嗜好を踏まえ、旅行博への出展や現地メディアを使った情報発信による積極的なプロモーションを行うとともに、多言語案内表示の充実など受け入れ環境を整備します。

 

豊かな人間性育む郷土教育を充実 意義深い『海難1890』

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髙垣 日本とトルコの心の交流を描いた『海難1890』が先日封切られました。この映画の活用など、今後の郷土教育についてお聞かせください。

仁坂 和歌山の自然や文化、歴史、先人などを学ぶ郷土教育は、子どもたちが地域に誇りをもち、豊かな人間性を育くむために大切です。125年前、エルトゥールル号遭難者を串本の人々が献身的に救助する活動を描いたこの映画は、郷土教育の観点からも大変意義深いと考えています。

写真=日本とトルコの心の交流を描いた『海難1890』
Ⓒ2015 Ertugrul Film Partners

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 また、子どもたちに和歌山の良さを広く深く知ってもらうため『わかやま何でも帳』を、道徳心を育てるため、和歌山版道徳の教科書『心のとびら』『希望へのかけはし』を作成しています。

写真=県ゆかりの偉大な先人の生き方や、いじめ、ネット問題に関する題材等を掲載し、道徳性を育む道徳教科書

 

髙垣 最後に、来年に向けての抱負をお聞かせいただけますでしょうか。

仁坂 「まちづくり」「少子化対策」「産業活性化」「教育」「医療・福祉」を重点項目に、強力かつ大胆な施策を展開します。

 特に、来年は「和歌山再興」をテーマに、かつて人口が多かった時の勢いやまちの賑わい、活発だった産業活動など、もう一回、和歌山の力を取り戻したい。その実現に向け、倦(う)まず弛(たゆ)まず怯(ひる)むことなく一日一日頑張ります。

髙垣 ありがとうございました。