本格料理を介護施設で手軽に味わえるよう、海南市で料理店を展開する銀鈴が5日、宅配を始めた。一般客向けに料理を提供してきた地元老舗企業が、介護食の宅配を始めるにあたり、田伏太紀副社長は「介護人材の不足が叫ばれる中、現場で働く人の負担を軽くし、利用者に職人の味を堪能してほしい」と意気込む。

 和歌山県は県人口の29・5%が65歳以上(2015年)と、近畿1位、全国6位の高齢化率。同社は、紀北を中心に法事や地域の会合などへ仕出し料理を月1万食届けている。このノウハウを生かし、高齢社会への貢献を目指して、調理後に短時間で急速冷却し、真空パックできる工場を新設した。

 3月には和歌山市紀三井寺の介護施設「桜園」で試食会を実施。メニューは鮭の西京焼き、大根とがんもどきの煮物、もやしとハムの和え物で、職員は真空パックを加熱して盛りつけるのみだった。スタッフの橋本あゆみさんは「手軽で彩りも工夫されていてありがたい。調理時間が短縮できる分、利用者さんとのコミュニケーションにゆとりができました」と笑顔を見せる。

 試食した80代女性は「魚に骨がなくて食べやすい。柔らかく、ほどよい大きさに切ってくれていました」と喜び、利用者たちは完食。田伏副社長は「流動食も用意できます。おいしく、栄養バランスのとれた料理で、食べる楽しさを届けたい」と張り切っていた。

(ニュース和歌山より。2017年4月8日更新)