木の国・和歌山の森林について1年かけて学ぶ、和歌山県森林インストラクター会主催の「わかやま森づくり塾」が、10月スタート分で10年目を迎える。これまでの受講者は高校生から70代まで160人以上。身につけた知識と技術を生かし、修了後に地域で活動するメンバーは多い。同会の岡田和久さんは「普段の暮らしの中で森林に目を向ける、そんな習慣をつくるきっかけになれば」と願っている。

森林インストラクター会主催講座 修了生 地域で活動いきいき

 和歌山市広原、急斜面に広がる竹林で作業する女性。父親が所有するこの場所で、茂った竹に倒れる方向を計算しながらのこぎりを入れ、手際よく伐採していく主婦の森留津(るつ)さんは、今月修了した9期生だ。「うんざりしそうな作業ですが、副産物を人に喜んでもらえるなら、続けられるかなと考えています」。今後は森づくり塾で習った竹炭作りを思い描く。

 人の手が入らず竹林が広がった里山、間伐が行われないことから昼間でも暗く、下草が生えないため、表土がむき出しになって保水力が低下した人工林…。こうした森林の現状を知ってもらうため、同会は2008年に森づくり塾を始めた。期間は1年。第3水曜夜に同市三沢町の中央コミュニティセンターで座学を行い、第4日曜の実習では、県内各地の森林へ出向いて間伐や竹林整備に汗を流す。

 実習では最初の半年間、紀美野町にある竹林で作業する。2期生以降、竹を切って広葉樹を植える作業を毎年行っており、計4000平方㍍を整備した。

 1年間の受講後は、1期生有志が09年に立ち上げたグループ、クラブ森づくり塾に入り、森林整備を続ける人も多い。

 同クラブに所属する岩田禎子(よしこ)さんは5期生。子育てが一段落し、何か挑戦できることを探していたところ、ニュース和歌山で森づくり塾を知った。「キノコについて学ぶ回では、食べられる種類、食べられない種類を教わり、実際に調理し味わいました。生態系の中で倒れた木や落ちた葉を分解する重要な役割をキノコが果たしていると知ったのが印象に残っています」。今は岩出市の根来山げんきの森倶楽部にも入り、同森の整備にあたる一方、森林インストラクター資格取得を目指し勉強中だ。

 6期生の土井康晴さんは、和歌山市の西山東地区で里山づくりに取り組む須佐しいやま倶楽部の事務局長。「受講するまでは我流でチェーンソーを使っていましたが、木が倒れる方向を考え、ロープで引っ張りながら切る方法など、基本から教わりました。何より大きかったのは、自然に関心を持つ人がこんなにたくさんいるんだと勇気づけられたこと」。今は地域の仲間と毎月2回、里山の環境整備を行う。「作業していると、生えてくる植物、ここにいる虫が気になってくる。山が宝に見えてきます」

 指導にあたる岡田さんは「『毎日通る道から見える山が気になる』『落葉する森、しない森、いろんな山があるんですね』…。そんな感想を聞くのがうれしい。塾がきっかけになって、自然の見方が変わってきたのが分かります」とにっこり。卒業したばかりの森さんは「自然に興味があるけれど、何から始めたらいいか分からない人、子どもに自然のことを教えたいと思っている人、そんな人に受講してもらいたい」と呼びかけている。

写真=9塾で学んだ技術を生かし、竹林を整備する森さん(左)

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 10年目の森づくり塾は10月〜来年9月。高校生以上対象。5000円、学生4000円。希望者は住所、氏名、年齢、電話番号を県森林インストラクター会(FAX073・432・6028、メールforest-o@ares.eonet.ne.jp)へ。問い合わせ電話はFAXと同じ。11月14日締め切りだが先着20人。

(ニュース和歌山/2017年9月30日更新)