紀の川市 観光バス会社が運営

 紀の川市内の集会所を回り、日本茶やコーヒーを無料で提供する移動カフェ「ひなたぼっこ」。コロナ禍で観光需要が減る中、かつらぎ町の日の丸観光バスが始めた新事業だ。食品や日用品の移動販売も兼ね、高齢者からは好評。普段は観光バスを運転する菅谷祐介店長は「新型コロナウイルスの影響で外出を控えていた人が来てくれ、やりがいを感じています」とほほ笑む。

 同市粉河の西の窪集会所。午前10時半、身体機能低下を予防するための体操を終えた住民が、飲み物を片手に軒先でおしゃべりを始める。「きょうのお昼なんよ?」「この甘栗、食べなあ」。車に並んだみかんやパン、菓子を購入する人も。一定の距離を保って30分ほど会話を楽しみ、帰途につく。

 移動カフェは同市と包括連携協定を結んだ日の丸観光バスが昨年10月に始めた。新事業の立ち上げにあたり、移動販売車で地域を回る際にできることはないか、同市高齢介護課に声をかけたところ、「地域の人が集まりやすい場づくりにつなげてほしい」と要望を受けた。観光バスの利用客に飲み物を提供するノウハウを生かし、移動カフェを開くことにした。

 体操教室の終了時間に合わせ、毎日4~5ヵ所を回る。3月末までに270回を予定し、来年度はさらに増やす計画だ。よく利用する西の窪地区の中岡妙子さんは「みんなと話しながらお茶を飲む時間を楽しみに、体操に来る人が増えました。品数も豊富で、とても便利」とにっこり。

 菅谷店長は「『お茶がおいしい』『今度は〇〇を積んできてな』と喜んでもらえるのが励み。憩いの場づくり、お年寄りの見守りに加え、買い物も楽しめると、一石〝三〟鳥を期待されている。運転手の接客サービス向上にもなり、コロナ収束後に生かせます」

 同課の揚戸翔副主任は「紀の川市は3人に1人が高齢世代。コロナの流行を受け、体操に参加するお年寄りが減り、運動不足から要支援になった人も。飲み物や気軽なおしゃべりを目的に顔を出す人が増えれば、健康維持と地域の見守りになる」と期待している。

写真=移動販売車の前が即席カフェに

(ニュース和歌山/2021年2月6日更新)