三葛地区の中村正美さん 近隣住民憩う場に

 住宅が並ぶ入り組んだ細い道を進むと、枯山水風の庭が現れる。和歌山市三葛の中村正美さん(76)が昨年末、自らの手で完成させた庭が、近隣住民の憩いの場になっている。「今は遠出ができないが、ここで少し京都の雰囲気を感じてほしい」と願う。

 祖父母が住んでいた築180年の古民家を取り払い、家庭菜園を始めようと考えていた中村さん。京都の寺で見た庭園を思い出し、「あの風景を再現したい」と昨年9月、インターネットや本を頼りに独学で作業を始めた。

 木を伐採し、元々あった大きな石と、購入した小石を使って、枯山水風の庭園に。さらに水が流れる滝とししおどしを設置し、涼しげな音を楽しめる日本庭園の装飾、水琴くつを造り上げた。自動車整備の技能訓練校で19年間、講師を務め、力学に詳しく、重い石を動かしたり、滝造りの材料を組んだりと、ほとんど一人で作業した。

 三葛地区集会所のすぐ南側に完成した庭では、近隣住民がベンチで談笑し、孫と一緒に遊ぶ姿も。「滝から流れる水の音が心地よくていやされる」「風情があって落ち着く」と好評で、併設する菜園で採れた野菜をおすそ分けして交流を深める。

 中村さんは「新型コロナの影響で飲みに行く機会がなくなり、浮いた小遣いで造ったものがみんなに喜んでもらえてうれしい。暑い日が続きそうなので、次は日よけを考えないと」と創作意欲はわき続けている。

(ニュース和歌山/2021年8月14日更新)