独自の文化 写真で伝承

 20年以上かけ、硫黄島を除く国内400以上の有人島を訪れ、島特有の祭りをフィルムに収めてきた海南市の写真家、黒岩正和さん(42)が1月17日、初めての写真集『百島百祭』を光村推古書院から出版した=写真下=。「海に隔てられたことで、各島が独自の神事を育んできた。〝国内の異文化〟を感じてもらえるとうれしい」と期待している。

Ⓐ仮面を被り、細長い葉で体を覆った鹿児島悪石島のボゼ Ⓑ赤と黒が特徴的な仮面神が現れる薩摩硫黄島のメンドン Ⓒ出陣時の士気を高めるために行われる広島因島の法楽踊り

 黒岩さんは向陽高校を卒業後、京都の精華大学芸術学部へ進学し、写真技術を学んだ。子どものころ、ユーラシア大陸をヒッチハイクで横断するテレビ番組を見て憧れていたこともあり、18歳から東南アジア各国を野宿しながら放浪。その後、中国雲南省の山岳少数民族の暮らしを長期に渡って撮影した。

          黒岩正和さん

 転機は21歳の時に足を運んだ日本の島で、偶然出合った祭りだ。「自分の思っていたイメージをはるかに超えていた」と衝撃を受け、「他にどんな祭りや風習があるのか興味が湧きました」と、国内の島を巡り、祭りを撮り始めた。

 これまでの国内訪島数は、延べ1600以上。400を超える祭りに触れた。現在は精華大非常勤講師をしながら、年の3分の2を和歌山と京都で生活し、残りを撮影の旅にあてるほどだ。

 写真集には78島の祭りを収録。うち、鹿児島県悪石島のボゼや薩摩硫黄島のメンドン、広島県因島の法楽踊りは国や県の無形文化財に登録されている。中には撮影後に休止したものもあり、「気付いたら祭りを記録する貴重な一冊になっていました」と驚いたほどだ。

 「私たちがイメージする神社や寺の祭りとは明らかに文化が違い、各島には同じものがひとつとしてなかった。ぜひ現地で体感してほしい」と願っている。   

 25×17×2㌢、208㌻、4950円。

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 写真集の発売を記念し、2月27日㊍まで大阪市中央区のメットライフ本町スクエアで写真展「島魂〜TOUKON」を開催中。午前10時〜午後7時(最終日2時)。無料。また、きょう22日午後1時からのギャラリーツアーで約30分、黒岩さんが見どころを解説する。無料。予約不要。詳しくは「黒岩正和 島魂 大阪」で検索。

(ニュース和歌山/2025年2月22日更新)