昨年12月9日放送のフジテレビ「THE MANZAI」。トリに登場した爆笑問題の太田光さんが舞台を終え、引く前に叫びました。「あっで〜」。きょとんとしました。これは和歌山の落語家、桂枝曾丸さんのギャクの「あで〜」では…。なぜ。

 ラジオ番組を通じ、爆笑問題の太田さんと枝曾丸さんが交流を深めているとの話は小耳に挟んでいました。枝曾丸さんご本人によると、きっかけはインターネットでラジオを配信する「ラジコ」です。 ラジコには有料サービスのエリアフリー機能があり、これを用いると、聴取エリア外の民放番組を聴けるのです。大のラジオフリークの太田さんはこれで全国津々浦々のラジオ番組を耳にし、ひっかかった番組についてTBSラジオの「爆笑問題カーボーイ」で取りあげ始めたのです。

 その中で、「つながるワイドしそまるの全開!金曜日」(和歌山放送)も再三触れられ、番組を通じたやりとりが生じました。また太田さんが取り上げる地方局番組のパーソナリティ同士が交流を進める意外な展開となりました。

 その一つとして昨夏、豪雨被害を受けた広島を枝曾丸さんは見舞いました。広島RCCラジオの横山雄二アナウンサーを訪れ、復興支援のチャリティーライブに参加。広島のライブ会場では集まった人たちから「あで〜」の合唱で熱烈歓迎を受けました。台風21号の際は、枝曾丸さんが広島の番組で和歌山の被災状況を伝え、今度は被害を見舞う声が寄せられました。枝曾丸さんは「互いの地域を我が事のように心を寄せる。ラジオを通じて新しい親戚ができた感じです」と話します。

 感心するのは、このかかわりがローカルでいながらローカルを越えた人の交流、情報発信のあり方を体現していることです。例えば「あで〜」は、枝曾丸さんいわく「和歌山の人の喜怒哀楽が最もこもり、短くぼやっとしているのに何か全体が伝わる不思議な言葉」で、和歌山の人だからこそ分かるニュアンスがあります。それが地域を離れても別の角度が加わると、面白さが伝わる。枝曾丸さんも「ラジオが新しいメディアになりつつあるのを感じる。私も和歌山の地名や地域の事を話す際には他地域の人も分かるよう最近は一言つけ加えています」。今や番組への便りは全国各地から寄せられます。

 都会が素晴らしく、地方はダメで遅れているとの見方は崩れつつ、現実的な格差はあります。しかし、地方ならではのちょっと濃い面白味も、その味を残したまま広がりを持てる兆しを見ます。その現れとして太田さんの「あで〜」は感慨深く、私も思わず「あっで〜」とうなってしまうのです。 (髙垣善信・ニュース和歌山主筆)

(ニュース和歌山/2019年1月12日更新)