取材で初めて紀美野町小川地区を訪ねた。生石高原のふもとにあり、地区の中心を梅本川が流れる。そのほとりにある公民館でお話を聞かせてもらった▼到着早々、公民館と小学校とのあまりの近さに驚いた。運動場を通らないと入口にたどり着けない。児童数は12人。校長を含む3人の教師が、近所で暮らす元教師の協力を得て学校を切り盛りしている。地元に伝わる獅子舞や踊りを指導するなど、地域とのつながりを大切にしているそうだ▼放課後になると、子どもたちが公民館へ遊びに来る。靴を脱ぎ散らかしていると、公民館のスタッフから雷が落ちる。また、近所のお年寄りが集まって、童謡や手遊びを教えることもある▼街中の学校では、1人の子どもに対し、これだけ多くの大人が日常的にかかわる場は少ないだろう。豊かな自然と深い人間関係の中で育つ子どもは、側を流れる梅本川のように澄んだ心を持った大人に育つに違いない。山あいで出合った地域と学校の在り方に、深く感銘を受けた。(林)