疲れてくると、酢の利いたものが欲しくなる。あの酸っぱさがのどを通り抜ける刺激に目が覚め、脳も体もピリッと奮い立つように感じるのだ▼幼いころに過ごしたミカンの産地、有田地域には、「酢が利かん人」という方言がある。友人によれば「気が利かない人、ピリッとしたものがない人」の意味だそうだ。県内各地で酢飯を使った郷土寿司が食べられ、酸っぱいものを好む和歌山人らしい例えだと思う▼和歌山は全国でも有数の「酢」好き県。一人当たりの年間消費量が4379㍉リットルで全国1位だった2012年を筆頭に、ここ10年は上位にランクイン。酢を使った食文化が根付いている証なんだろう▼同じく上位クラスの大分には「すもつくれん」との方言がある。由来は「酢」と「巣」の2通りで、意味は「甲斐性がない、つまらない」。言葉と食のつながりはとても興味深い▼歳をとるにつれ“酢が戻る(切れがなくなる)”と他者への配慮が抜けがちだ。人に会う時はくいっと1口、酢を利かせてみても良いかもしれない。 (得津)

(ニュース和歌山/2022年3月26日更新)