日本語が分からない外国人患者を支援する全国組織「J─MIND(ジェイマインド=日本災害医療通訳ネットワーク)」。病院における平時の通訳業務を基本に、地震や水害など、いざという時にも対応する専門家集団で、外国人と医療の仲介役を担う。「災害時、外国人は弱者になりやすい。日本人と同じように、誰もが当たり前の医療を受けられる最初の一歩にしたい」と話す、同団体代表で和歌山市の医師、益田充さんに聞いた。

平時も災害時も

法学部から国際人権NGOを経て医師に転身。和歌山市の病院で救急外科医、国際医療救護要員として第一線に立つ

──どんな団体ですか?  

「言葉の問題から適切な医療を受けられない外国人患者を通訳で支援する組織です。メンバーは約200人。医療通訳者が約7割、ほかに医師や看護師、国際交流関係者らが在籍しています。いざという時にもすぐ機能できる『顔の見える関係』を大切にしており、組織名の『MIND』は、互いに心を配り、気にかけ合える温かなつながりを意味しています」

──設立のきっかけは?

 「医学部生時代にタイの病院で実習していた時、日本人患者の通訳をしたところ『君は名医だ』と深く感謝されました。治療をした訳ではないので驚きましたが、外国でケガや病気をした際、言葉が通じる安心感がどれほど重要か実感した瞬間でした。その後、前任地の熊本で、外国人と医療の仲介役を担う「医療通訳者」の育成を目指し、養成研修を実施。専門知識を持った修了生を、外国人対応に時間を取られていた病院へ派遣すると大変喜ばれました。『災害』を強く意識したのは、2016年の熊本地震です。混乱の中、修了生たちが日常業務と同様、医療現場で通訳支援を果たしている姿に接し、平時の活動が災害時にも有用であることを目の当たりにしました。コロナ禍でオンラインの可能性が広がった21年、全国組織として立ち上げました」

──活動の一例を教えてください。

 「24年1月の能登半島地震から一カ月後、被災した外国人のための健康相談会を金沢で開きました。当初『外国人の医療ニーズはない』と言われていましたが、私たちが6カ国語で告知すると何人もやって来ました。ニーズがなかったのではなく、当人たちにアプローチできていなかったのです。会場では、オンラインで結んだ医療通訳者が相談者の話を日本語に翻訳すると同時に、私の話を外国語に訳して対応しました。穴水町から来た女性が『周りに英語を話せる人がいなくて』と困り果てていた様子が印象に残っています」

当たり前に届ける

患者役と通訳に分かれてロールプレイする養成研修参加者(益田さん提供)

──和歌山でも医療通訳者の育成を?  

「23年に英語と中国語の養成研修を実施し、14人が修了しました。ただ、残念ながらまだ活用には至っていません。原因は認知不足。今は、医療通訳の存在や必要性を知ってもらうことが第一と考え、県や和歌山市医師会のご理解をいただきながら、開業医の先生方へ活動内容を紹介するチラシを配布するなど普及に努めています」

──今後は。

 「和歌山は南海トラフ巨大地震の被害が懸念されており、災害時のために、医療通訳の派遣体制をいち早く確立したいです。インドネシア語やベトナム語など、対応できる言語も広げていきます。さらに、イギリスやフィリピンなどに在住するメンバーとも連携し、海外にいる日本人のリモート医療支援や、国際的な災害時における相互支援も視野に入れています。私は、アフガニスタンで人道支援に尽くした医師の中村哲氏に感銘を受け、同じ道を志しました。医療は誰ひとり傷つけない分野です。当たり前の医療を当たり前に届け、平和に貢献したい。それが夢です」

 問い合わせはメール(office.jmind@gmail.com)。

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◆7月28日に発生した令和8年熊本地震を受け、現地に赴いた益田さんから、状況やJ─MINDの活動を伝えていただきます。記事は随時、ニュース和歌山ホームページで発信します。

(ニュース和歌山/2026年8月1日更新)