インターネットやスマートフォンなどの情報通信技術が発達し、便利な情報提供システムや人の知的作業を支援するサービスが広がっています。このような中で人工知能の利用が進んでいます。

 人工知能の技術は、コンピューター上で記号処理(文字や単語、論理を扱う)技術を実現する形で始まりました。1956年に米国のダートマス大学に人工知能研究の始祖となる著名な研究者が集まりました。そこでは、人の英知は、書物に文字(記号)として記載され、文化や知識の伝承が行われてきたことに基づき、人工知能の基本原理を記号処理と定めました。

 80年代になると、社会への応用として専門家の知識を扱うエキスパートシステムが開発されました。このシステムで機械の故障診断や意思決定支援、機械の機構や配置設計などの分野で、専門家レベルの知的作業が可能になりました。限られた領域で人よりも高速かつ効率的に問題解決ができるようになりました。

 チェスや将棋の世界でも、人工知能とプロ棋士の対決が始まり、97年にはチェスの世界チャンピオンが、IBMコンピューター「ディープ・ブルー」に負け越し、将棋の電王戦・第1戦(2012年)では、米長邦雄永世棋聖と将棋ソフト(ボンクラーズ)が対戦し、プロ棋士が敗北しました。その後、第2戦(13年)、第3戦(14年)の団体戦5番勝負でも、コンピューターが勝利しています。第4戦(15年)では、事前に、将棋ソフトを貸し出すハンディをつけ、かろうじてプロ棋士が勝利しました。

 45年には、コンピューターが人の知能を凌駕(りょうが)するシンギュラリティ(技術的特異点)が到来すると予想されています。人は、機械にはない能力として、対人能力、芸術的センス、五感を使った仕事、想像・創造力、異文化を許容する力などを身に着けることが重要です。和大では、そうした人の真価を発揮できることを目標に、主体性をもって生涯学ぶ力・コミュニケーション力・問題解決力の育成を推進していきます。

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 和歌山大学とニュース和歌山は毎月原則第1土曜、和歌山市西高松の松下会館で土曜講座を共催しています。次回は12月5日(土)午後2時。講師は教育学部の岩野清美准教授で、演題は「社会科教育と社会参画」です。

(ニュース和歌山2015年11月28日号掲載)