『鬼滅の刃』を一気読みした。だれもが陥るかもしれない理不尽に世界が覆い尽くされないための闘いといった物語が明快で、楽しめて泣けた▼熱中して漫画を読んだり、アニメを見たりした後、うつろな気分にならないだろうか。これを「PADS」(ポスト・アニメ・デプレッション・シンドローム)というらしい。個人的に振り返ると『ルパン三世』『妖怪人間ベム』『デビルマン』『宇宙戦艦ヤマト』。世代的に最右翼は『機動戦士ガンダム』か。いずれも終わった後、一人取り残されたような悲しさが抜けなかった▼ドラマ終了後の〝ロス〟や長い小説を読み終えるのが惜しくなるのと似ているが、外国では日本のアニメが引き起こす特有の感覚ととらえられているようだ。登場人物に愛着を覚えやすく、世界観が深いからではないか▼そう言えば、やるせない結末だった漫画『スラムダンク』の映画化が発表され話題になった。戦後の漫画、アニメにもおのずと日本人のわびさびがにじみ出ているのかもしれない。 (髙垣)

(ニュース和歌山/2021年2月27日更新)