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 ある所に動物たちがなかよくくらしている小さな村がありました。名前は「動物村」といいます。この村で事件を解決するたんていとして働いているのがサルくんです。友だちのカラスくんといっしょに毎日がんばっています。

 「ハクショーン」。サルくんが大きなくしゃみをしました。「今日も寒いね」とカラスくんがいいました。この村では1つ不思議なことがおこっています。ここはなぜかおひさまがいつも雲にかくれていて、冬のように寒いので、みんな外にいきたがりません。

 「おなかへったなぁ」とサルくんがバナナを食べようとしました。すると、バナナが窓の外から出ていってしまったのです。2人はあわてて後を追いかけましたが、とちゅうで見失ってしまいました。「どこへいっちゃったんだろう」

 その時、サルくんがなにかにすべってころんでしまいました。「いてて、何にころんだんだろう」。足もとを見てみると、それはバナナの皮でした。「きっとだれかがぼくのバナナを食べてすてたんだ。これは事件だよ。カラスくん、調べにいこう」

  サルくんはかっこいいぼうしをかぶり、虫めがねをもって出かけました。少し歩くととつぜん、「うわー」という悲鳴がしました。急いでいくと、いぬくんがあ わてて走ってきました。「ぼくのハンバーグがどこかへいっちゃった」。なんとバナナだけではなく、ハンバーグもどこかへ消えてしまったのです。「ぼくのハ ンバーグとった人をぜったい見つけてね」といぬくんがいいました。「わかったよ、ぜったい見つけるからね」とサルくんはいぬくんを元気づけました。

  するとまた、「きゃー」と悲鳴が聞こえました。そこへいくとリスちゃんがいました。リスちゃんはにげていくサンドイッチを追いかけていました。すると、サ ンドイッチが上にのぼって雲の中に消えてしまいました。なんと消えた食べ物はみんな空にのぼっていたのです。「私のサンドイッチをとりかえしてね。サルく ん」とリスちゃんがいいました。「うん、がんばるよ」とサルくんが元気にいいました。

 ですが空は大きな雲のせいでよく見えません。「どう しよう」とサルくんが考えているとカラスくんが「ぼくにまかせて」といって飛んでいきました。少しするとカラスくんがスズメやハトなどのたくさんの鳥をつ れてきました。そしてみんなで雲をはねであおいでどかしてくれました。「やったー」

 そして雲の後ろでおいしそうにサンドイッチを食べてい たのはなんとおひさまでした。「おひさまが犯人だったの?」とサルくんが聞くと「ごめんなさい。ずっとねていたからおなかがすいていたんだ」。なんとこの 村が寒いのはおひさまがねていたからなのです。雲はおひさまのおふとんだったのです。おひさまは反省していたので、みんなは許してあげることにしました。

 サルくんはみごとに事件を解決しました。おひさまがおきたので、村はとても暖かくなり、動物たちはみんな元気に外で遊んでいます。サルくんはやっぱり名たんていです。

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児童文学作家の嘉成晴香審査員… だれが犯人なんだろう? そう思いながら読み進めると……まさかのこの方がそうだったなんて。物語の運びが良く、わくわくさせてくれました。食べ物が空へ 飛んでいくなんて、なんておもしろい発想でしょう。みんなに許してもらったこの方は、きっとこれから暖かな春を呼ぶんでしょうね。それからサルくん、有能 な助手がいてほんとによかったね!

(ニュース和歌山2016年1月16日号掲載)