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 ぼくの名前は、池田ひろし。アップリケ小学校の二年生だ。せはひくいけど、いつも元気いっぱいの男の子だ。そんなぼくには、ひみつがあるんだ。きみにだけ、そっと教えてあげるね。

  それはね、ぼくはいつも大きなポケットがついたふくを着ているんだけど、じつは、このポケットの中には、ひつじがすんでいるんだ。名前は、ジョーン。ね?  ふしぎだと思わない? でも、これはほんとのほんと。ポケットの中は、ジョーンのねるへややおふろやリビングもある。そして、もちろんたべものもあるん だよ。

 なんで、ジョーンがポケットの中にすんでいるかって? それはね、だれにもひみつだよ。じつは、ぼくのいえのちかくに、どうぶつえ んがあるんだけど、ぼくはそこがすきでね、なんどもなんども行っているうちに、ぼくたちはなかよしになったんだ。そのうち、いえにかえってもジョーンに会 いたいなって思っていたら、空からながれぼしがおちてきたんだ。ぼくはほしにむかって、なんどもジョーンといつもいっしょにいられますように!っておねが いしたんだ。

 するとね、夜なのに、空がきゅうに明るくなって、ゆめみたいだけど、目の前に、かみさまがあれわれたんだよ。そして、ぼくの おねがいを聞いてくれたかみさまがジョーンをけしゴムくらいの大きさにしてくれたんだ。そのおかげで、ぼくのポケットに入れるようになったんだ。ジョーン をポケットにいれたとたん、かみさまは、ポケットの中にたくさんのへやや、食べものもよういしてくれたんだ。

 こうして、ぼくとひつじの ジョーンは、まいにちいっしょに、いられるようになったんだ。だけどね、ある日、ジョーンがさびしいかおをして、ぼくにこう言ったんだ。「あのね、ひろ し。今まで言ってなかったんだけど、ぼくのふるさとで、ぼくはおかあさんとわかれてきたんだ。ぼくが、どうしても、ひとりでたびをしたいって言ったから。 おかあさん、おわかれのとき、さびしそうなかおをしていたな……」。ジョーンの目から、なみだがあふれたんだ。

 それを聞いたぼくは、いっ ぱい考えた。今は、だいすきなジョーンといつもいっしょにいられて、とってもしあわせ。でも、もし、ぼくがおかあさんとはなればなれになってしまったら、 とってもさびしいだろうな。だから、ぼくはきめた。ジョーンをおかあさんのところにつれていく!

 ぼくは、ポケットにジョーンを入れたまま、ながいながい道をいっぱいあるいた。そして、足がいたくて、くたくたになったとき、やっとジョーンのふるさとに着いたんだ。

 そして、ジョーンのおかあさんを見つけた。ぼくたちが友だちになったことを聞くと、とってもよろこんでくれた。ジョーンもジョーンのおかあさんも、ぼくも、みんなニコニコえがおになれた。

 え? それから、どうなったって? かみさまは、ジョーンのおかあさんも小さくしてくれたから、ぼくのポケットにすんでいるんだ。ぼくたちは、とーっても、しあわせなんだ。

 ないしょのないしょの話だよ。

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児童文学作家、嘉成晴香審査員…アップリケ小学校2年生のひろし君のないしょ話に、すっとひきこまれました。テンポがよく、歌詞にもなりそうな物語ですね。もっとたくさん歩いたら、ジョーンのお友達もいっしょにすめるようになるかもしれません。

(ニュース和歌山2015年1月10日号掲載)