大きな国のお城で飼われているにわとりがいました。そのにわとりの名前はにわとりくんです。にわとりくんは王様のお気に入りのペットで、毎朝にわとりくんがきれいな声で鳴いて国の人々を起こします。それが、にわとりくんのお仕事でした。

 でも、にわとりくんは、友達のカラスくんやスズメちゃんが朝鳴いて人を起こすお仕事をしていないのに、どうして自分だけがこのお仕事なんだろうと思いました。

 ある日、にわとりくんは、「毎朝、鳴くのはもうイヤだ」と言って、朝、お城からにげ出しました。そして、友達のカラスくんの家に遊びに行きました。「おはよう、カラスくん。遊びに来たよ」と言いました。しかし、返事はありません。まだねているのかな、カラスくんは、がんばり屋さんだからなーと思って今度は、スズメちゃんの家に行きました。

 「おはよう、スズメちゃん。遊びに来たよ」と言いました。スズメちゃんもカラスくんと同じで返事がありません。スズメちゃんは、優しいからご近所さんの悩み相談していたんだろうなーと思いました。

 ヒマになったにわとりくんは、町を歩くことにしました。すると、にわとりくんはある事に気がつきました。それは、国の人々すべてがまだねむっているのです。たいへんだと思って、にわとりくんは急いでスズメちゃんの家に行きました。「スズメちゃん。たいへんなんだよ、起きて起きて」とさけびました。スズメちゃんは、しばらくしてから目を覚ましました。

 「どうしたの? ずいぶんとあわてているみたいだけど」「たいへんなんだよ。国中の人が起きないんだ」「そうなの、それじゃあ鳴けばいいのよ。にわとりくん、どうして今日鳴かなかったの?」「それはね、スズメちゃん。みんな朝鳴いて国の人々を起こすお仕事をしていないからだよ。ぼくだけ不公平じゃないか」とにわとりくんが言うと、スズメちゃんは悲しそうに言いました。

 「どうしてにわとりくんがそのお仕事なのかと言うとね、にわとりくんが毎朝きれいな声で鳴いてくれるでしょ。するとね、国の人達がすごく気持ちのいい朝をむかえられるのよ。私は、にわとりくんが鳴いてくれると元気が出てくるのよ」

 にわとりくんはスズメちゃんのこの言葉を聞いて笑顔になりました。また、とてもうれしくなって自分に自信が持てるようになりました。にわとりくんは急いでお城に帰りました。にわとりくんのじまんのきれいな声で国の人々を起こしました。にわとりくんは今までにないすがすがしい気持ちになってまた笑顔になりました。それからはもう、にわとりくんがお仕事をイヤに思うことはありませんでした。

(創作童話コンクール佳作)

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 漫画「和歌山さんちのハッサクくん」作者、いわみせいじ審査員…素直な文章で、スーッと心まで入ってきます。ただ、応募作にはにわとりの朝の声を題材にしたものが多くありました。作品のどこかに作者ならではの脚色、表現、アイデアなど味付けがあれば、さらに魅力的になるでしょう。
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 「今年の干支とりが主役の創作童話コンクール」の入賞作品を毎週土曜号で紹介します。

(ニュース和歌山より。2017年2月11日更新)