『孟子村不動縁起』によると、空海が熊野参詣を終えて海南市藤白から和歌山市吉礼、小手穂に入り、孟子の里に向かった。この時、里では疫病がはやり、人々が折り重なるように倒れていた。

 空海が「あたりに異なる滝はなきや」と尋ねると、村の長老は「八滝ございます。中でも坤向(こんこう)の滝こそ四季を通じて絶ゆることのない名水でございます」と答えた。空海は、真っ直ぐに落ちる水を見て驚き、「この滝こそ役小角が先に錫を浸し給ひし霊水なり。この滝に垢離(こり)をして病難を救うべし」と、17日間の滝行を行い、巖に不動明王を刻んだ。

 以来、不動山那賀寺、不動の滝と呼ばれる。水量は少ないが、蝉しぐれの中に絶え間なく落ちる様は、清涼感たっぷりだ。

(ニュース和歌山/2018年9月1日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。