『紀伊続風土記』に、「分領山 郷中の艮栗栖川荘の堺にあり高山にて登り三十町許二峰を起すにより一名を矢筈山ともいふ四番荘下川下村堺の山に續けり二峯の中間に瀧あり」。これが分領の滝だ。

 滝と分領山の間に大師堂がある。空海が密教を広げる土地を求め、帰国前に唐の明州の浜で三鈷杵(さんこしょ)を投げた。はるか海を飛行した三鈷杵が最初に引っかかったのが、大師堂のあるこの場所だという。近くには空海が袈裟をかけたという袈裟掛岩もある。

 切り立った断崖に落ちる滝に体を持っていかれるような、恐怖すら覚える絶景。空海は修行したのか。ここに高野山のような霊場をなぜ開かなかったのか。ミステリーのまま滝は豪快に落ち、五色の虹がかかっていた。

(ニュース和歌山/2018年10月13日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。