『紀伊続風土記』に、「倶盧尊佛 東の谷にあり高さ十餘丈の巌をいふなり。疱瘡神と崇む又鉾島ともいふ邑民奉祭する者より疱瘡護符を出す」とある。当時、強力な感染力と高い致死率で恐れられた疱瘡(天然痘)。村人は谷を訪れ、高さ30㍍の御神体、大磐座に祈りを捧げ、護符をもらった。

 昔は、大勢の村人が畑作や炭焼、林業で暮らした。鯨骨鳥居があったというが、今は石灯籠や円柱状の石の残骸のみ。参る人がない荒れ果てた参道を行くと、「南無千手観音黒尊佛、例祭は旧1月18日」と書いた立て札がある。黒尊佛とは倶盧尊佛だ。滝音に気づいて振り向くと、そこにあるのが左右2条の滝。大磐と滝、この風景こそかつて信仰のあった疱瘡大神を物語っているのか。

(経路…国道168号から大津荷林道に入り、山道を進む)

(ニュース和歌山/2018年12月15日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。