ぶらくり丁の角地に5月開店した寿司店「ぶらくりきっちん かどっこ」。灯りがこぼれるガラス張りの店内では、寿司職人の草分利和さん(53)が確かな目で選んだ食材をさばき、素早く握る。「私が作った寿司を食べて一人でも多くの人においしいと言ってもらいたい」。真っ直ぐな目を向ける。

 

うれしい視線

──ぶらくり丁商店街唯一の寿司専門店です。

 「『ぶらくりきっちん』を経営する大里公子社長が、1軒でも多くぶらくり丁のシャッターを開け、商店街を元気にしたいと寿司店を構えることにし、声をかけていただきました。これまで職人として働いていた自分にとって、〝大将〟になることは大きな転機だと思い、お受けしました」

──新鮮な魚が並んでいます。

 「勝浦のまぐろ、さごし、いさきなど、地元産の魚を中心に、旬の食材を毎朝、市場に足を運んで選んでいます。良い魚があれば、メニューになくても仕入れ、握りや一品にして提供します」

──人気やおすすめのメニューは。

 「焼き穴子、きゅうり、しいたけ、自家製卵焼きが入った『かどっこ巻き』です。具材の味や食感を楽しめるよう、シャリはあえて少なくしています。まぐろやサーモン、生赤エビといった、新鮮な食材をふんだんに使った海鮮丼も人気です」

──お客さんの反応は。

 「おかげさまで毎日のように来てくれるお客さんができ、店の認知度は上がっています。場所は名前の通り〝角っこ〟なので、道に迷うことはないそうです。ご近所の奥様方がランチを、近隣で働く会社員が仕事終わりにお酒と寿司を楽しみに来ます。最近は寿司といえば回転寿司に行くご家庭が多いようですが、『子どもたちに職人が握る寿司を食べさせてあげたい』と来てくれる家族連れも増えています。カウンター越しにキラキラした目で子どもが寿司を握る私を見ていますね」

 

楽しみな場所で

──いつから修業をされていたのですか。

 「中学卒業後からこの世界で働き、今年で38年目です。初めは寿司にあまり興味はありませんでしたが、一歩足を踏み入れ、毎日握っていると、自分の作る寿司に愛着が湧いてきましたね。県内では紀文寿司や幸寿司、大阪では北新地の店で修業し、過去には店長として運営を任されたこともありました。実は、あまり表に出るような性格ではないので接客は上手くないと思う。でも、大将になり、自分でメニューを考えられる自由と、衛生面や、売り上げといった大将だからこそ求められる責任を持つことが、自分にとっていい勉強になると思っています」

──今後の展望は。

 「新しい店だからこそ、今までできなかった創作寿司や一品料理をメニューとして出すことができる。旬に合わせた期間限定メニューや、学生向けのセットも考案中です。市の中心部は、大学や新しい飲食店が増えているので、これからが楽しみな場所だと感じています」

【ぶらくりきっちん かどっこ】
和歌山市米屋町30─2
午前11時〜午後8時
水曜定休
☎073・488・5276

(ニュース和歌山/2019年6月26日更新)