我が背子が かざしの萩に 置く露を さやかに見よと 月は照るらし 作者不詳

 ハギは昔から多くの人に親しまれている花で、草かんむりに秋と書くように秋を代表する花の1つです。園内にはたくさんのハギが植えられており、今満開の株もあれば、つぼみの株もあるので長く楽しめます。山道を歩いても自生のハギを見ることができます。

 一口にハギと言いますが、ツクシハギ、マルバハギなどいろいろな種類があって、それぞれで花や葉の様子が違います。葉は3枚1組になっていて、マメ科の植物によく見られる特徴を持っています。花が散った後にはお豆が出来ます。どんなさやに、いくつ入っているでしょう。観察してみてください。でもそんなことは気にせずに秋の風情を楽しめばいいと思います。

 万葉集にはこんな歌が残っています。

 「我が背子が かざしの萩に 置く露を さやかに見よと 月は照るらし」

 背子とは、女性側から愛する男性を指す言葉です。この歌は、あなたが髪に挿した萩についた露をはっきり見よと言わんばかりに、月は照っているのでしょうという意味でしょうか。深く読めば、隣にいる好きな男性のことばかり見ているのではありません。月が照らした葉につく露も見なさいと、月が嫉妬(しっと)しているという解釈も…。いずれにせよ、秋の夜に月を眺めている男女の姿が浮かんできそうな歌ですね。 (和歌山県立紀伊風土記の丘非常勤職員、松下太)

写真上=ツクシハギ、同下=マルバハギ

(ニュース和歌山/2019年10月9日更新)