言葉の発声、母音、間合い、深い呼吸を意識した朗読術の一つ〝言語造形〟。これを親子演劇で表現する「ことばの泉」が22日㊐、古事記を題材に公演を行います。母子で舞台に立つ代表の東郷桃子さん(40)に思いを聞きました。

 

命宿るセリフ

──〝言語造形〟…、聞き慣れない言葉です。

 「シュタイナー教育の創始者として知られるルドルフ・シュタイナーが提唱したもので、言葉の特性を意識しながら、深い呼吸で丁寧に発音し、空間に響かせる朗読・演技術です」

──一般的な演劇との違いは。

 「物語の中で役を演じるというより、発するセリフの音韻や、相手の言葉との間合いを見せます。理解するための言葉ではなく、声に出す言葉を大事にします。例えば、『うるわしき』を発する場合、一音一音はっきりと空間に響かせ、最後の『き』まで母音を意識して発声することで、情景を浮かび上がらせます」

─声に迫力があって、引き込まれます。

 「団員は月2回、大阪の言語造形家、諏訪耕志さんの指導を受けています。音韻のほかに、息づかいの強弱、体の動きや身振りなどを身につけ、しっかりと自分の言葉に命が宿るよう繰り返し練習します」

──今回、どんな作品を上演しますか。

 「日本最古の書物『古事記』を題材に、日本神話に挑戦します。イザナミとイザナギの国生みから始まり、黄泉の国、天の岩戸開きへとドラマチックに展開します。私はイザナギを演じ、子育て中の大人7人と9〜13歳の子ども4人が出演します。舞台から降り注がれるセリフや言葉の世界をお客さんがどう感じるのか、とても楽しみです」

 

感覚を解き放つ

──演劇を始めたきっかけは。

 「母がシュタイナー教育を広めるために岩出市で、教室をしていました。自分に子どもができてから改めて興味を持ち始め、昨年4月、シュタイナー教育を基にした『mitte(ミッテ)の庭』という3歳から大人までが遊んで学べる場を立ち上げました。民舞や、編み物・刺しゅうなどの手仕事クラスのほかに演劇があり、これがことばの泉です」

──なぜ親子で?

 「第一に、子どもに言葉を大事にしてほしいと思いました。それにはまず、親が日常で話す言葉を大切にし、向き合う姿を見せることが必要だと思い、言語造形で演劇に挑戦しました。子どもは練習から大人を見ているので、自然と身についていくことが多いです」

──家庭でもできる言語造形はありますか。

 「深い呼吸と言葉を意識して行う絵本の読み聞かせがオススメです。できるだけじっくりと間を置いて言葉を発しています。子ども自身が言葉と向き合うきっかけとなり、自分の言葉を大事にする力が芽生えるように感じます」

──目指すところは。

 「言語造形は自分の心に光を当て、向き合うことを教えてくれます。人生の中で壁を感じ、苦しいときでも、自分の中にある光に出合える場所でありたいです」

 

舞台「古事記の傳(つた)へ」

 12月22日㊐午後1時、和歌の浦アートキューブ。
 1500円、当日2000円、高校生1000円、中学生以下無料。チケットはこくちーずHPか東郷さん(0736・62・2666)。

(ニュース和歌山/2019年12月7日更新)