農家による農家のための農業系ラジオが今、農家の間で注目されています。昨年10月から不定期にインターネットで配信する「よるののうか」。和歌山市奥須佐の果樹農家、山本康平さん(29)が話す軽快な和歌山弁が評判を呼ぶ、県内初の番組です。ラジオや仕事への思いを聞きました。

 

きっかけは糖度

──どんな番組ですか?

 「農家が農業について前向きに話すインターネットのラジオ番組です。1年間で約40回配信しました。聞いてくれる人は2500〜3000人ほど。大半は親から継いだ若手や新規就農した全国の農家で、畑仕事中に聞くようです。県内外で活躍する若手農家をゲストに、僕が日々感じていることを、深夜ラジオのノリで話します。就農のきっかけ、品種、野菜の生育、それから僕のプロポーズ話も(笑)」

──人気は?

 「リスナーから届いた途絶えさせたくない“農家あるある”を紹介するコーナーです。例えば、『初めて畑でミカンを食べる人は皮をどこへ捨てるか必ず聞く』『全身花柄でコーディネートする農家のおばあちゃんのファッションセンス』など。週20〜30通届きます」

──なぜラジオを?

 「昨年、僕が目標にしてきた糖度30度の桃が初めてできたのがきっかけです。マスコミに発表し、これで直売所は大行列、世界は変わる…と喜びましたが、何も変わらなかった。『良いものを作れば売れる』との思い違いに気付きました。そのころ福岡の農家が配信するラジオに呼ばれ、好き放題に話したところ、トークが面白いからと勧められ、やけになっていたこともあり、好きなことをしようと始めました」

 

感謝のエールを

──糖度にこだわりが?

 「高校講師を辞め、24歳で実家の農園を継いだ際、近所の農家に『山東はあら川のような知名度がないのに、何で継いだんや?』と言われました。未来はないのかと落ち込んでいた時、大阪の桃農家が糖度のギネス記録に登録されたニュースを見て、すがる思いで話を聞きに行くと、見ている世界が全然違った。品質へのこだわり、知識量の多さ、そして単価の高さ。農業に希望を持つ姿に、こんな農家もいるんだと。そこから各地の篤農家に話を聞いて回りました。以来、自分なりに糖度を研究してきました」

──ラジオをしていて良かったことは?

 「7月の暴風雨で白桃の収穫初日分の9割が傷んだとSNSに投稿したところ、ラジオのリスナーが拡散してくれ、直売所に行列ができて即売しました。この話はテレビにも取り上げられました。『いつも応援してくれる康平を助けよう』と真っ先に情報を広めてくれたリスナーのおかげ。今後は他の農家に貢献していく人間になれればとの思いが芽生えました」

──ラジオを通して何を伝えたい?

 「最初の何くそが今につながり、多くの人とかかわる中で様々な価値観を知り、世界が広がりました。農業で悩んでいる人へのエールになるよう、明るく楽しく前を向いて農業をする若手の姿を伝えていきたいです」

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 インターネットで「よるののうか」と検索。配信情報はツイッター「よるののうかこうへい感動果物農家山本農園」で。

(ニュース和歌山/2020年9月19日更新)