かつて和歌浦に30以上のかまぼこ店が立ち並ぶ、通称「くずし通り」がありました。ここに12月1日、「和歌濵かまぼこ」をオープンさせたのが、奥村武弘さん(67)です。昨年廃業した老舗かまぼこ店で45年勤めたベテラン職人。「守り続けてきた和歌浦の食文化を次の世代に継承したい」と意気込んでいます。

 

職人になり45年

──なぜ職人の道に?

 「祖父が1920年に和歌浦でかまぼこ店を創業しました。幼いころからかまぼこ店が軒を連ねるくずし通りを見て育ちました。職人になって45年以上、かまぼこ作り一筋に取り組みましたが、昨年7月、廃業に追い込まれました」

──何が復活を後押ししたのでしょう?

 「周りの人からの『また食べたい』との声と、かまぼこ作りが好きな自分の気持ちに気づいたことですね。地元の漁師さんらが親身になってくれる中、偶然、くずし通りに土地が空いたんです。これには深い縁を感じました。県のふるさと納税型クラウドファンディング事業に選ばれ、店と工場の建設費に大勢の方の応援をいただけたことも大きかったですね」

 

期待超える味を

──店には色とりどりのかまぼこが並びます。

 「甘みと香ばしさがくせになる『大板』は、白身魚のシロクチをメーンに3〜4種類を混ぜたすり身を使い、蒸してから焼き目をつけたものです。しこっとした歯触りの良さが自慢で、以前勤めていた店の看板商品でした。赤と緑と白のすり身を塗り分け、彫り細工を施した『かのこ』はおせち料理を華やかに彩ってくれます。美しく細工できるようになるまで長い修業が必要です」

──ほかの商品は?

 「すり身に卵を加えて、口当たりをソフトにした『和歌焼』、ゆで卵をすり身で包んで揚げた桜形の『ばくだん』は子どもに人気で、孫に食べさせたいと復活を熱望された商品です。揚げかまぼこのきくらげ天やしょうが天は、おでんの具としてもオススメですよ」

──こだわりは?

 「何と言っても質の良い原料を使うことですね。以前の店では機械を使って板にすり身を盛っていましたが、今はすべて手作業です。できあがりの弾力に差が出ました。伝統の味を守りつつ、腕に磨きをかけて、作りあげています」

──これからは?

 「1年あまりお待たせした分、お客さんの期待を超える味を届けたい。声援を追い風にし、家族と力を合わせ、和歌浦の味を守っていきます」

 

【和歌濵かまぼこ】
和歌山市和歌浦南1-3-16
9時〜17時 
㊌定休(12月は不定休)
073・445・1508

(ニュース和歌山/2020年12月5日更新)