自家焙煎(ばいせん)した豆、サイホンを使ったコーヒーにこだわる和歌山県岩出市のカフェ「フェイバリットコーヒー」。6月にオープンした和歌山市中心部の新店とも、女性を中心に連日、多くの客が詰めかける。そんな人気店で居心地の良い空間を追求するのが、岩出店開店時から店長を務め、現在は和歌山店店長の西田武史さん(36)だ。

豆は自家焙煎

 ガラス管の中で沸いた湯がコポコポと音を立てると、ほどなく深みのある香りが漂う。和歌山店、8席あるカウンターの真ん中は、目の前にサイホンが並ぶ特等席だ。

 「サイホンは高温で短時間に抽出する方法で、ドリップに比べると豆の味わいがはっきり出るのが特徴です。中高年の方には懐かしく、若い方にとっては目新しい。演出効果も抜群です」

 大学卒業後、百貨店の婦人服売り場で働くかたわら、休日は喫茶店やカフェめぐりに興じた。そんな時、ラーメン店「丸田屋」を営み、カフェのオープンを考えていた中学時代の友人、丸田征吾さんに声をかけられた。1年間、大阪のカフェで修業し、2011年、岩出店店長を任された。

 「カフェの主力商品はコーヒー。欠けたり、虫が食ったりした豆が1つでも混ざると、えぐみにつながりますから、時間をかけ、目で見て抜き出します。その後が焙煎。気温や湿度、豆の鮮度で煎(い)る時間は変わる。焙煎室から伸びた煙突から逆流すると煙が抜けませんから、風向きにも目を光らせます」

県産果物ふんだんに

 県産の野菜や果物を積極的に使った軽食やスイーツも人気。ぶどう、栗、メロン、いちごなど地元の恵みたっぷりのタルト、パフェ、サンドイッチは根強いファンがいる。

 「果物の農園にはほとんど足を運びました。作っている方の思いを知りたいですから。うちの店で地元の人に食べてもらえることをやりがいに感じてくれる農家さんも増えてきた。うれしいことです」

 昨年末にはハワイのコーヒー農園に1週間滞在し、豆の収穫を初めて経験した。

 「多くの人が時間と労力をかけ、全て手作業で摘んでいました。1本の木から1年間に採れる豆はコーヒー約50杯分。豆1粒の重みを肌で感じました。今も、これからも、まだまだ勉強。コーヒーの魅力をより引き出し、たくさんの人にとってのフェイバリット(お気に入りの)コーヒーを届けていきたい」

写真=旬の県産ぶどうを使ったタルト

【フェイバリットコーヒー】和歌山店…和歌山市十二番丁55。073・426・1245▽岩出店…岩出市中迫341-1。0736・69・1245。いずれも営業時間は午前11時〜深夜0時。月曜休み。

 

(ニュース和歌山/2017年9月13日更新)