開業35周年を迎えたJR和歌山駅前のホテルグランヴィア和歌山で総料理長を務める市森重宏さん(57)。関西圏のホテルやレストランで修業を重ね、和歌山に腰を据えて18年です。「多くの現場を経験したことで、状況によって対応する調理技術を学べました。すべての縁に感謝しつつ、食材の宝庫、和歌山で腕を振るっています」と話します。

様々な現場

──出身は?

 「大阪府堺市です。調理師専門学校を卒業後、ホテル日航大阪で4年働きました。他の調理場を経験したいと考えていたところ、ちょうど知人に帝塚山のフレンチレストランを紹介されました。その後もハイアットリージェンシーや南海サウスタワーなど、いろんなホテル内の宴会場、レストラン、カフェで経験を積みました」

──どんなことを学びましたか?

 「たくさんありますが、20代の時に勤めたホテルで、当時先駆けだった真空調理法を教わりました。やわらかく、煮崩れせずに仕上がる方法です。おいしいだけでなく衛生的で、食材が長持ちするため、フードロスが減少する調理法。SDGsが注目される今も役立てています」

──それぞれのちゅう房で感じたのは?

 「キッチンごとに違う特徴が印象的でした。来客数が予想できず、下準備が難しいレストラン、進行具合に併せて料理を提供する宴会場、お客様の出入りが激しく、素早い作業で商品を提供する必要があるカフェ。これらに臨機応変に対応する力がつきました」

──和歌山にはいつ? 

 「18年前、グランヴィア京都で働いていたところ、当時の総料理長に誘われました。和歌山で働くのは初めて。海と山が近く鮮度の高い食材が豊富で、料理人として魅力を感じました。特にフルーツについては、おいしさも新鮮さもトップレベルだと思っています」

人気メニュー復刻

──こだわりは?

 「ソースですね。以前、ハーブティ専門店を任された経験があり、洋食に使うソースの決め手であるハーブの知識が深まりました。タイム、ローズマリー、オレガノなど香りを立たせて味に深みを持たせます。和食で言うと、しそやわさび、みょうがなどが近いです」

──ホテルは開業35周年です。

 「お客様アンケートで、『過去のメニューが食べたい』とのリクエストが多かったのを受け、特別メニューとして昔のヒット商品を復刻させます。5月は、すさみ町のイノブタを使ったハンバーグや梅酒煮込みを1階のカフェパスワードで提供します。イノブタは脂身があっさりしながらもコクがあり、特に復活希望の声が多かった食材です。このほか、お子様に人気だった25~30㌢の有頭大エビフライ、秋には栗やピスタチオ、ナッツをふんだんに使ったビッグ栗ロールケーキを復活させようと考えています」

「毬御膳」

──今後は?

 「まだまだ使いたい和歌山の食材があります。一番は和歌山のブランド牛、紀州和華牛。赤身はシンプルにステーキ、バラやすね肉は煮込み料理にすると、スッとおはしで切れ、ホロホロと口溶けが良いです。他では、肉厚でプリプリな食感の伊勢エビですね。当たり前のことですが、この先40年、50年と長く愛されるホテルであるよう、後進の育成にも力を注ぎたい。総料理長である私ができる、和歌山のみなさんへの恩返しです」

 

【グランヴィア和歌山】
和歌山市友田町5-18
☎073・425・3333(代表)

(ニュース和歌山/2022年4月30日更新)