〝クラフトビール界のオリンピック〟とも言われる「ワールドビアカップ」(WBC)が5月、アメリカで開かれ、アイリッシュスタイル・レッドエール部門の金賞に平和酒造(海南市溝ノ口)の商品が輝きました。1928年創業の蔵元で、6年前からビール造りを担当する髙木加奈子さん(33)に話を聞きました。

飲みやすさ追求

──WBCとは?

 「アメリカにあるクラフトビールの醸造業界団体、ブリュワーズアソシエーションが2年に1度開いています。クラフトビールの品評会では世界最大級。今回は世界から約1万500銘柄が出品されました。103部門あり、私たちはアイリッシュスタイル・レッドエールを含む3部門に出品しました」

──アイリッシュスタイル・レッドエールとは?

 「アルコール度数が高すぎず、麦芽の香りも控えめ、マイルドで飽きがこない味で、赤い色が特徴のビールです。私たちのコンセプトは〝一口で満足させるのではなく、飲みやすいビール〟。基本的には麦芽とホップのみで、それぞれの配合や水の量、煮詰める時間で色が決まります。鮮やかな赤い色がちゃんと出るかどうか、毎回緊張しながら造っています」

──自信作が最高評価を受けました。

 「国内ではある程度自信を持っていましたが、ビールは元々、海外のお酒。本場の商品に勝てるかどうかは…。それでも出品したのは、一人の醸造家として挑戦したかったのと、品質が対外的に評価されることがやる気アップにつながると思ったからです。初挑戦だった2018年が落選で、2回目の今回が金賞と聞き、実力以上の賞をもらっちゃったな…とプレッシャーを感じましたね」

ゼロから始める

──なぜ酒造りの道に?

金賞を受賞したレッドエール

 「大学時代、先生に勧められた日本酒を飲んではまり、『お酒を造る技術を学びたい』と平和酒造に就職しました。社でビール造りが始まったのは2016年。仕事終わりに利き酒をするのが恒例で、ある時、ビール嫌いの上司が、とあるクラフトビールを飲み、『おいしいな』と感動したのがきっかけでした。一番ビール好きとの理由で私に白羽の矢が立ったんですが、ゼロからのスタート。他の会社に出向いて教わりながら試行錯誤を続け、今に至ります」

──そこから6年で世界の頂点ですね。

 「クラフトビールのメッカであるアメリカで、現地の人に評価してもらえたのは何よりうれしい。ビールに関しては他社に比べ、うちはまだ歴史が浅い。逆に言えば、やれることがもっとあるはずだと思っています」

──今後は?

 「今回はコロナの影響で授賞式への出席を断念しましたので、また賞をもらえるビールを造り、現地でメダルを受け取るのが目標。あとは日本酒とビール、両方の醸造技術を掛け合わせ、平和酒造だからこそできるオリジナルのお酒を生み出したいですね」

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 キーノ和歌山内、平和酒店ほかで販売。

(ニュース和歌山/2022年6月4日更新)