イタリア北西部にあるピエモンテ州の郷土料理を味わえる「トラットリア・イ・ボローニャ」(和歌山市十番丁)。腕を振るう小林清一さん(55)は、現地から訪れた客が驚くほど本場の味を再現しています。「古くから愛され続けているイタリアの伝統を、和歌山から発信します」と熱を込めます。
毎日でも飽きない
──ピエモンテ料理の特徴は?
「周りを山に囲まれているため、魚料理はほとんどなく、肉、野菜、バターやチーズなど乳製品を主に使います。有名なのは、ニンニク、アンチョビ、オリーブオイルで作ったソースに、カブやパプリカといった野菜を付けるバーニャカウダ、小麦粉と卵だけで練った、平たいパスタのタィヤリンです。見た目、味ともにシンプルで、毎日食べても飽きません」
──人気メニューは?
「『国産豚バラの一晩ロースト 玉ねぎバルサミコソース』です。文字通り、オーブンで一晩じっくり火を入れると、煮込んだように肉がとろとろになります。そこに玉ねぎの甘みとバルサミコの酸味がマッチしたソースをかけ、後味をさっぱりさせます」
──こだわりは?
「4品あるパスタのうち2品は、つるっとコシのある生地を、現地から取り寄せた製造器を使って毎日、一から作っています。また、日本人の味覚に合わせるのでなく、あくまで本場の味を提供しています。ピザやミートソースパスタのような、一般的にイメージされるイタリアンとは違うので、2013年の開店当初はなかなか厳しいものがありました。でも、この店でしか食べられないものを提供してきたことで、じわじわとリピーターが増えてきました。和歌山に長期滞在中のイタリアの人が来られ、『ふるさとの味そのままだ』と喜び、帰国するまでほぼ毎日、足を運んでくれたのはうれしかったですね。『ちゃんと再現できているんだ』と自信につながりました」
レシピがない苦労
──出身は?
「愛知です。静岡のイタリア料理店で9年働いた後、28歳の時にトリノへ。ミシュラン1つ星の店で2年間修業しました。日本へ戻る前に、ピエモンテの郷土料理を出す老舗店トラットリア・イ・ボローニャでパスタを食べたところ、それまで勉強してきたのとは全く違う味に驚き、急きょ帰国を延期して、その店で勉強を始めました。当初は2、3ヵ月の予定でしたが、昔から受け継がれてきた郷土料理にはレシピがない。外から来た私が味を再現するのは難しく、周りに認めてもらえるようになるのに5年かかりました。その後は10年間、ちゅう房を任されました」
──今後は?
「新しい料理も素晴らしいですが、その土地に長年伝わる料理のおいしさは別物だと信じています。縁あって和歌山で構えた店は来年で10年。これまでと同じ姿勢でピエモンテ伝統の味を作り続けます」
【トラットリア・イ・ボローニャ】
和歌山市十番丁19 Wajima十番丁ビル5階
12:00〜14:00、18:00〜22:00
☎073・422・8228
定休日=火曜、第1・3月曜
(ニュース和歌山/2022年11月26日更新)