NHK全国俳句大会が3月12日、東京で開かれ、和歌山市の雜賀絹代さん(70)が、戦後を代表する俳人、飯田龍太の名前を冠した「龍太賞部門」の最高賞に輝きました。15句合わせて1作品とする難度の高い部門で、「これでいいのかなと手探りしながら作ってきたのが、素晴らしい形で認めてもらえました」と目を輝かせます。

季節の移ろい

──受賞の感想は?

 「500人近い応募者の中から選ばれたと知った時はびっくりしました。受賞式で選者の高野ムツオさんに、『満場一致で決まった』と聞き、さらに驚きました。また、別部門の審査員で、テレビ番組の選者として活躍中の俳人、夏井いつきさんに『おめでとうございます』と声をかけていただけたことも印象に残っています。実は4年前、和歌山で開かれた夏井さんの句会ライブに行きました。参加者がその場で詠んだ句を夏井さんが選び、高評価だった7句の中に私の作品があったんです。その時の感激や、そこからさらにがんばってきたことを、ご本人に伝えられました」

──作品名の「大鳥居」はどこのことですか?

 「伊太祁曽神社です。去年の夏、句会の仲間と俳句を作りに行った時、参拝者や境内の木々、生き物などを見て、『いろんな視点で句を詠めそう』と直感。秋にかけて一人で何度も足を運び、100句以上作った中から季節の移ろいを表す組み合わせを試行錯誤し、15句を選びました」

──詠む際に心掛けていることは?

 「受賞句を見ていただくと分かるように、『今年米 ふはりと握る 三角形』『小鳥来る 木の神様の 大鳥居』と、なるべく難しい言葉は避けました。それと、特別な出来事を俳句にするのではなく、できるだけ日常を切り取った作品になるよう意識しています」

あれか これか

──俳句を始めたきっかけは?

 「子どもたちが独立した23年前、何か趣味をと探していました。ニュース和歌山で初心者向け俳句講座のお知らせを見つけ、『頭を使うことだから挑戦してみよう』と参加。あの時、記事を読んでなかったら、今回の賞どころか、俳句に出合ってなかったと思います」

──魅力は?

 「うれしい、悲しいといった感情をストレートな言葉で表すのではなく、季語を使って代弁すること。世界で一番難しいと言われながらも、奥ゆかしい日本語だからこそできる表現は、うまくいくととても気持ちいいです。言いたいことを何でもかんでも付け加えるのではなく、読む人に本当に伝えたいことを、選び抜いた17文字にまとめる難しさも魅力のひとつ。飯田龍太さんの『あれもこれもではなく、あれかこれか』との考え方が重要です」

──今後については?

 「大きな賞をいただきましたが、プレッシャーに負けず、淡々と今まで通り楽しもうと思います。そして、いつまでも俳句を好きでいたい。あと、10歳と9歳の孫が一緒に詠もうと言ってくれているので、家族で句会を開くのが夢ですね」

(ニュース和歌山/2023年4月15日更新)