ロンドンを拠点に世界で活躍する陶芸家、岩本幾久子さん(52)が11月1日㊌~5日㊐、初めて出身地の海南市下津町で個展を開催します。つるりとした磁器に〝ぶつぶつ〟が付いた食器や花器、日本初公開のトゲのある魚と古いまな板を組合わせた作品、さらに渡英前に作ったオブジェまで、〝発展型の陶芸〟を披露します。

 

〝ぶつぶつ〟の器

ぶつぶつやスパイクを使ったオブジェ、木製の古い道具と合わせた作品

──特徴ある作風です。

 「きっかけは英国王立芸術大学院在学中の2006年、多様な人々が使いやすい製品を作る「インクルーシブデザイン・プロジェクト」への参加です。目の不自由な人や年配者らの意見を聞き、カップや皿のつるっとした表面にでこぼこを付けることを思いつきました。指先が繊細な視覚障害の人に、『やりすぎだ』と言われながらも試行錯誤し、見た目も使いやすさもちょうどいい〝ぶつぶつ〟を探りました(写真Ⓐ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

──トゲがたくさんあるものも印象的です。

 「手触りを大事にしているため、見るだけで感触が伝わるよう心がけています。ぶつぶつは親しみやすいですが、鋭利なトゲ(スパイク)は緊張感を持たせてくれる点が気に入り、よく使っています(写真Ⓑ)」

 

 

 

 

故郷に環境思う

──最近の活動は?

 「マイクロプラスチック問題などから、『いずれ魚を食べられなくなるのでは』と心配になり、海洋汚染に関心を持ちました。18歳まで山と海が身近にある下津町で過ごしたことから、自然への感謝の気持ちが背景にあります。現状に危機感を持ってもらえるよう、目を空洞にし、ウロコの代わりにスパイクをつけた少し不気味な魚を古い木のまな板に乗せたもの(写真Ⓒ)や、使われなくなった道具を利用した作品を手がけています」

 

──今後は? 

 「出身中学校でSDGsについて話すことになっており、講演と作品から問題を身近に感じてもらえたらと考えています。また、今まで以上に古いものや捨てられるものを取り入れながら、環境への気付きになるような制作をしていきたいです」

 

──故郷での初個展へむけて一言。

 「昨夏、3年半ぶりに帰国した際に会った陶芸の師匠が、その後すぐ他界されました。『何かやりたいと思った時にやっておかないと!』と突き動かされ、実現したのがこの個展です。追求してきた発展型の陶芸を、実感していただけるとうれしいです」

                                                                

岩本幾久子 個展

 11月1日㊌~5日㊐、海南市下津町下津の市民交流センター。収益の一部は、6月の台風2号による水害からの復興支援に寄付する。午前10時~午後5時(最終日4時)。実行委(073・492・0210)。

(ニュース和歌山/2023年10月21日更新)