チラシや折り紙で色鮮やかに表現された懐かしのレコードジャケット。6月に仕事を退職した西英喜さん(67)が、昔聞いたロックのアートワークを貼り絵で模しました。「青春時代を思い出しながら没頭しています」の言葉通り、昨年の7月末から1年間で90枚を完成させました。現在、新和歌浦で初の個展を開催中。人生再出発のイントロが鳴り響いています。

元よりカラフル

──昔のレコードジャケットが並んでいます。

 「海外だとボブ・ディラン(写真Ⓐ)やデレク&ザ・ドミノス(同Ⓑ)、リトル・フィート、国内だと細野晴臣(同Ⓒ)、イエロー・マジック・オーケストラなど、60年代以降に発売されたものから、主に私が特に好きな34枚を選びました」

──ロックを聞き始めたきっかけは?

 「高校時代、同級生に勧められたイングランドのバンド、ディープ・パープルの『マシン・ヘッド』です。それまでバンドと言えば、テレビやラジオで流れていたグループサウンズでしたので、初めて聞いた耳をつんざくように鳴り響くギターの音、腹の奥が揺さぶられるようなドラムの振動に衝撃を受け、一気に洋楽にハマりました」

──貼り絵でデフォルメしています。

19歳の西さんと、クレヨンで模写したアートワーク

 「定年後に新しい趣味をと思っていた時、19歳のころにキング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』のジャケットを自室のドアにクレヨンで描いた(同Ⓓ)のを思い出したんです。ただ、絵を描くのが苦手な上、材料費を抑える方法を考え、貼り絵に行き着きました」

──原物よりカラフルに作っています。

 「美術の勉強をしたわけではないので、色彩など細かいことは分からず、『何色を置くのが一番おもしろいか』を考えています。毎回完成品を前に、『想像以上に良くできたな』と自画自賛(笑)。1枚で4日程度かかりますが楽しくて、気付けば1年で90枚作っていました」

 

 

色あせない記憶

──初めての個展です。

 「友人にプロのイラストレーターがいて、『作品を見たらなんて言ってくれるかな』と、SNSで40年以上ぶりに連絡を取りました。画像を送ったところ、思ったより食いついてくれ、会場のオーナーとつないでくれたんです。メールを送って1ヵ月経たないうちに、個展が決定しました」

──お客さんの反応は?

 「『色使いがユニーク』との声が多いです。また、見てくれていたジャケットの曲をBGMとしてかけた時、『この曲、懐かしい!』と喜んでくれました。作品を通して思い出を振り返ってくれたんだとうれしかったです。青春時代に聞いた音楽って、色あせずに記憶に焼き付いてるんですよね」

──今後は?

 「まずは100枚制作すること。また、地元アーティストの貼り絵を作ってほしいと頼まれたので、取りかかろうと考えています。依頼をもらえるなんて思ってもみなかったので、期待に応えたいです」

西英喜貼り絵展

 12月28日㊍まで。和歌山市新和歌浦の和歌浦芸術区。午前10時~午後6時。火曜定休。無料。芸術区(073・447・9170)。

(ニュース和歌山/2023年11月11日更新)