国内の人気モデルが多数登場するファッションフェスタ「TGC(東京ガールズコレクション)和歌山」。2回目の今年は、性別や障害に関わらず多様性を認め合う「共生社会」がテーマのステージ「ハーモニーマーチ」が設けられます。和歌山市在住で、LGBTQ(性的少数者)の榎本りまさん(19)は、「悩みを持つすべての人たちが自信を持てるようなパフォーマンスをします」と目を輝かせます。

〝前向き〟伝える

──TGCのオーディションを受けた理由は?

 「『共生社会の実現を目指す』という主旨を知人から聞き、『試しに受けてみたら』と言われて、どんなことをするのか分からないまま応募しました。私は心と体の性が一致しない〝トランスジェンダー〟です。体は男性ですが、心は女性。どうしても周りに言い出せず悩んでいる、同じLGBTQの人に勇気を持ってもらう方法はないかといつも考えていたので、良い機会をいただきました」

──ダンスパフォーマンスをされます。

 「実は課題にダンスがあると知らなかったんです。小さい頃、アメリカの歌手、ビヨンセが好きで、よくダンスのマネをしていたぐらいで、本格的な経験はゼロ。恥ずかしい気持ちがありますが、自分らしく、堂々とパフォーマンスをします。前向きになると周りの人も私のことを前向きに捉えてくれ、それに伴って、見える世界も変わるんだよって、ランウェイの上から、悩んでる人たちに伝えたいです」

 

肯定感上げる

──いつから「周りと違う」と感じましたか?

 「小学5年の時、気付いたら男の先生を目で追っていて『あれ? なんでだろう』と、少し違和感がありました。中学1年で同級生の男の子を好きになり、女の子を同性として見るようになって、自覚しました」

2年前、初めて女性用のメイクをした時、「これが本当の私だ」と感じたという

──周囲の理解について苦労したことは?

 「自覚してから、どんどん所作や話し方が女の子っぽくなっていったので、心ない言葉を投げられたり、いじめを受けるようになりました。でも、ひとつ上の姉や、姉の友達が一緒になって助けてくれました」

──お姉さんはすでに分かっていた?

 「うっすら気付いていたんだと思います。高校に進学する直前、初めて姉に話したんですが、『そうなんやね』と言われただけで、驚いてはいなかったです。その一週間後、母にもカミングアウトしましたが、始めは少し否定的でした」

──どんな反応でしたか?

 「当然ですが、それまで男の子として育ててくれていたので、受け入れづらかったようです。でも、『今の自分を変えるつもりはない』と、はっきり伝えると『あなたの生きたいように生きたらいいよ』と理解してくれました」

──同じ悩みを持つ人たちが、きっと大勢いらっしゃいます。

 「私を見て驚く人はいると思います。でも、気にしていたら、これからの人生をやっていけない。私自身が私を『可愛いよ』と褒め、自己肯定感を上げ続ける方が楽しくて、生きやすいと思ったんです。自分の個性を認めたことで、今は幸せに暮らしています。他のだれでもなく、私は私。唯一無二の存在でありたいです」

(ニュース和歌山/2024年1月20日更新)