南海加太線沿線の空き家活用などを手掛けるまちづくり会社「かだせん家守舎」代表の神田和輝さん(36)が、和歌山市松江北の元果物店倉庫をリノベーションして古本屋「本の駅 マツエホンザ」をオープンした。沿線の駅をテーマにした本棚や私設図書館など、ユニークな工夫満載の店に込めた思いを聞いた。

本棚に駅標識

─開店のきっかけは?

選果場をリノベーションした店舗は懐かしさが漂う

 「25歳でUターンし、まちづくりを学ぶため和歌山大学に社会人入学したころ、読書量が一気に増えました。ただ、読み終わった本を売るだけだともったいないので、人と本の出会いや循環の場になればと、古本の交換イベントを始めました。さらに自宅倉庫が手狭になったタイミングで、果物店の選果場だったこの倉庫を借りることができ、今年3月29日にオープン。コンセプトの『本の駅』は、『駅のように本が行き交う場所』を意味しています」

 

 

 

──利用方法は?

 「古本交換は、持参された本を査定し、その金額分、店内の他の本を選んで持ち帰ってもらいます。特徴は、本を手放す人が書いたメッセージ付きしおり。次の読み手との間に本を介した新しい縁が生まれるようにと、一言書いてもらったしおりをそのまま挟んで並べています(写真Ⓐ)。私設図書館は現在5人が『本棚オーナー』になって自分の蔵書を置き、閲覧用として共有しています。個人の趣味や専門性が光る品揃えが好評です」

 

──本棚に駅標識が掲げられていますね。

      駅にちなんだ本が並ぶ

 「すべて南海加太線の駅で、それぞれの地域にちなんだ本を集めています(同Ⓑ)。例えば、製鉄所がある中松江駅なら工業の本、八幡前駅なら木本八幡宮が有名なので神社や歴史の本、サーフィンスポットのある磯ノ浦駅ならリゾートの本、終点の加太駅なら海や釣りの本…。本棚を通して『ここはこんな街なんだ』という発見や街のPRになればと思っています」

 

対面でふれあう

──オープン後の反響は?  

「近所の人や子どもたちがふらっと立ち寄る『地域の小さな図書館』のような雰囲気です。学校帰りの小学生が『ただいま!』と入ってきて遊んだり、親子で楽しそうに絵本を選んだりしている姿を見ると、居心地のいい場を作れたかなとうれしくなります。インターネットの普及で本を手に取る機会は減っていますが、だからこそ対面で人と人がふれあえる本屋の価値を大切にしたい。ここへ来る人たちの幸福度が上がり、地域の結びつきが強くなるきっかけになればと願っています」

──今後は?  

「この店舗以外に、街中のいろんなお店や施設に本棚を置く『街中ライブラリー』を構想しています。コーヒー店なら味わいを深める一冊、果物屋なら瑞々しい果物の絵本というように、その場所にフィットした本棚を街中に点在させるのが夢です。南海加太線は、わずか25分ほどで豊かな自然にアクセスできる素晴らしいローカル線。その沿線は、私が生まれ育った大切なふるさとでもあります。本業の空き家リノベーションとも連動させ、本を起点にコミュニティを広げ、新しいことに挑戦したい人が集まる住みやすくて面白い街をつくっていきたいです」

本の駅 マツエホンザ

和歌山市松江北7丁目2─5 営業時間や定休日など詳細はインスタグラム「@matsue_honza」で検索。

(ニュース和歌山/2026年9月5日更新)