令和8年熊本地震の発災から約2カ月後の9月20日(日)、熊本市国際交流会館で外国人向けの「こころのケア研修会+相談会」を開催しました。今回は、その模様を報告します。

 この催しは、7月の初期活動(連載第1回、第2回参照)の中で、「留学生など不安を抱える外国人を支援する団体を探している」との声を受けて企画しました。

 目的は、外国人被災者の心理的支援です。異国の地で大きな自然災害に遭遇した際の不安は計り知れません。また、ケガや病気で病院を受診したくても、日本語が分からないためにためらってしまうケースも考えられます。私たちは医療通訳を介し、日本人と同じ医療情報や支援を外国人に届け、安心してもらうことを目指しています。

 事前に全国約200名のJ-MINDメンバーに呼びかけ、熊本会場には英語、中国語、ロシア語、やさしい日本語の医療通訳者が赴き、他言語はオンラインで待機。計11言語で対応し、告知チラシも11言語に翻訳して配布しました。

11言語に翻訳して配布した告知チラシ

 午前の部は「こころのケア」をテーマにした研修会です。参加者は3名で(うち外国人1名)、皆さん「困っている人を助けたい」という支援意識の高い方々でした。言語は、言葉を分かりやすく言い換える「やさしい日本語」で行いました。

 講義では、「フラッシュバックや不眠などの症状は、心を守るための正常な防衛反応であり、病気や心の弱さではない」という点を丁寧に説明しました。また、被災者は自身について「大丈夫」と答えがちですが、これは自分より深刻な状況の人と比較し「(あの人よりは)大丈夫」と言っていることが多いです。10年前の熊本地震の時、ある被災者は何を尋ねても「私は大丈夫」と繰り返していましたが、実は家が半壊する大きな被害に遭っていました。言葉通りに受け止めるのではなく、「家の状況は?」「ご家族の様子は?」と具体的に確認することが大切です。

 支援者自身のケアも欠かせません。トラウマ反応は、被災者から支援者にも伝わりやすく、共感力が高い人ほど影響を受けがちです。まずは自分自身の心も大切にしてほしいと伝えました。

 午後の相談会には、熊本市在住の台湾出身60歳代男性が参加され、相談者、中国語の医療通訳者、私の3人で机を囲みました。「テレビなどで被災地の映像を多く見たため不安になっている」と仰っていたので、情報と適切に距離を置くことがPTSD(心的外傷ストレス障害)の予防になると伝えました。あわせて、不安を感じたときのリラックス法として「3秒で息を吸い、2秒止め、4秒で吐く」深呼吸を一緒に練習しました。

相談会の様子。医療通訳者(左)を介し、外国人相談者(奥)にアドバイスする益田

 相談会は、参加者が身体的にも心理的にも楽になり、笑顔を取り戻すことがゴールだと思っています。この日、男性が「今後もこういう場をつくってほしい」と笑顔で話されている姿を見て、確かな手応えを感じました。被災者や支援者に対して「いざとなれば頼れる相談先がある」という安心を提供できたことは大きな成果です。

 この日の様子はNHK熊本のニュース番組『クマロク!』でも紹介され、多くの人に活動を知ってもらう機会となりました。

 一方、課題は、八代市や宇城市など、より被害の大きかった地域での活動です。本来、医療支援は現地の態勢が整えば引き上げるのが原則ですが、外国人支援においては長期的なサポートが必要な場合があります。今後は日程や場所を再検討しつつ、状況に応じた継続的な支援を模索していきます。

                         ◇  ◇

益田充…J-MIND(日本災害医療通訳ネットワーク)代表。法学部から国際人権NGOで難民支援に携わる中、アフガニスタンで人道支援に尽くした中村哲医師の献身に感銘を受け、医師に転身。和歌山市の病院で救急外科医、国際医療救護要員として第一線に立つ。問い合わせはメール(office.jmind@gmail.com)。

J-MINDおよび益田充さんの詳細はこちら。

(ニュース和歌山/2026年9月28日更新)