終電を逃した人に声をかけ、自宅に一緒に行く番組「家、ついて行ってイイですか?」が好きだ。一見ただの酔っ払いに見える人々の部屋でのたわいもない会話から、その人の歩いてきた道や人柄がありありと映し出される▼「酒をいっぱい飲んでいい夜だ」と喜んでいた男性の自宅に向かうと、奥さんの姿がない。実は治療が難しい病気で長らく入院中、部屋からは奥さんが用意した遺影候補の写真が出てくる…など、酒に酔わずにおれない心情が分かると思わず涙ぐんでしまう▼番組を見ていると、市井の人だれしもにそんな人生ドラマがあるのだと改めて感じる。きょうコンビニでレジに立っていた人、すれ違った車に乗る人、同じ職場の人、きっと一人ひとりに▼ニュース和歌山でも、取材相手の大半は著名人ではなく、この街に生きる人たち。話題性だけに飛びつかず、もっと繊細に、心の声により近いところへ。そうして語ってもらったドラマを、ていねいに描かねばと襟を正す思いだ。 (宮端)