スポーツ界のパワハラ報道が止まらない。レスリングを皮切りにアメリカンフットボール、アマチュアボクシング、体操、重量挙げと1チーム内から競技組織全体のものまで幅はあるが、組織力を持つ人が一選手を抑圧する構図は共通している▼ある競技で、しごきを受けたことのある身としては、これらの問題の根底には選手育成に残る「限界越え信仰」があるのではないかと思う▼だれにも言われず自らを磨ける選手はいる。その一方、豊かな才能はあるが、気持ちが甘く、壁を越えられない選手もいる。そうすると、指導者は選手を追い込み、限界を越えさせて結果を出させ、自信と精神力を生ませる。それが当然の時代があったし、今も内心、必要と考える指導者は多いのではないか▼この方法は上下関係を基盤にし、組織運営に転じると、パワハラを生みやすい。そもそもカリスマ指導者に未熟な一選手が文句は言えまい。東京五輪は、スポーツ指導の民主化という難しい課題の節目になりそうだ。 (髙垣)