だれもこぼれ落ちない社会

 前回、自分たちが気づかないうちに、こぼれ落ちる人がいるかもしれない場があると書きました。これはイベントだけの話ではありません。実際にこれを読んでいるあなたが通う学校、職場、地域、社会など、あらゆる生活の場面で、このような人が近くにいることが考えられます。

 統合失調症という病気をご存じでしょうか? 人格、知覚、対人関係などに支障をきたす脳の疾患なのですが、初めて聞いた方もいるかもしれませんし、また周りにそんな人はいないと思うかもしれません。しかし日本では、この病気の人と名字が「山田」の人はほぼ同数存在し、だれもが発症する可能性があると言われています。つまり山田さんに会ったことがある人は確率上、統合失調症の人や、統合失調症の可能性がある人と出会っているのです。

 では、なぜこの病気のことを知らない、または会ったことがないと思っている人がいるのでしょう。実情は、偏見があることで病気を打ち明けることができなかったり、一般企業で統合失調症の人が働きにくい環境だったりと様々な社会課題が絡み合っていて、あなたが日ごろ生活する場から見えなくなっているだけなのです。

 ここでは一例を挙げましたが、他にも社会には少なからず、色んな分野でこのような方々がいます。またこれは他人事ではなく、自分自身がいつ当事者になるか分からない問題です。

 だれもがこぼれ落ちない社会…。大切なのは、福祉が根付いた社会の中で、だれもが幸せに生活できることです。

 私が開催するイベントは当初から福祉関係者だけでなく、一般からの参加者に支えられ、多様な価値観の中で福祉を考えるきっかけをつくってきました。自ら関心を持ち、耳を傾ける人が多ければ多いほど日本の福祉は充実し、安心して暮らせる社会になっていくと思います。

 イベント自体はこれからもオンラインや対面の場など、状況に合わせて模索が必要だと感じています。この根を絶やさず、和歌山に暮らす人が福祉と向き合う機会を創出し続けていきたいです。

(ニュース和歌山/2020年9月26日更新)