オンラインイベントの功罪

 2018年12月から、顔を合わせて気軽に福祉を語るイベントを開催し、手ごたえを感じていた矢先、新型コロナウイルスが流行。対面で行う交流が難しくなりました。

 そこで今年4月からすべてのイベントをオンラインに切り替え、6月からは新たに「紀州FUKUSHI大学」として、全国各地で活躍する福祉実践者を毎月1人招き、話を聞く場を設けました。

 しかし、Wi─Fi環境がない、やり方が分からない、また対面が好きだからとの理由で参加を見合わせる人がたくさんいました。オンライン開催にすることで、場から遠ざかってしまう人が出てきたのです。 

 一方、切り替わることで喜ぶ人もいました。重度の脳性まひで23時間介助を受ける車いすの参加者です。今まで彼がイベントに参加する場合、1ヵ月前にはヘルパーに移動手段の申請が必要でした。また、申請した時間を延長できないので、話が盛り上がっても最後まで居られないことが多々ありました。しかし、オンラインなら時間を気にせずたくさん人と交流でき、また急なイベントがあっても気軽に参加できるようになったのです。

 このほかにも彼にはイベント会場であるカフェに到着するまで多くの障害がありました。そもそも店のソファーが固定されていれば車いすを入れることすらできません。

 結局、対面でもオンラインでも参加できない人はいて、オンラインだからこそ、オフラインだからこそ顔を出せる人もいる。当初はオフラインはオンラインの代替えにしかならないと思っていたのですが、どちらにも良さがあり、単純にどちらかの代わりになるわけではないと分かりました。

 場所、時間、バリアフリー環境、内容、イベント情報を伝える手段…。一つ条件が違うだけで、知らず知らずのうちに出席できない人が出てしまいます。私たちは無意識に参加しにくい場を形成してしまっているのかもしれません。

 大事なのは「こぼれ落ちる人がいるかも…」と想像し、少しでも参加しやすいよう工夫すること。コロナ禍によって改めて実感したことです。

(ニュース和歌山/2020年9月19日更新)