南海和歌山市駅ビル建て替えの発表を受け、市駅周辺の商店主や自治会でつくる市駅まちづくり実行会議のメンバーが6月8日、尾花正啓和歌山市長に駅前活性化構想への市民参画を求める要望書を提出しました。

 計画では、2017年にはオフィスビルと2階建て駅舎、続いて18年度末までに市民図書館、20年度中に商業施設を建てます。地元は髙島屋撤退で消沈していましたから、歓迎の声が強いです。特に駅の建て替えは現図書館の再利用、移転する市民会館の跡地利用と、市駅周辺の再編成の面があります。これらを踏まえ、実行会議のメンバーは駅前活性化を、行政、民間、市民の協働で進めるよう求めたわけです。

 先日、市産業戦略会議の基調講演を行った経営共創基盤代表取締役の冨山和彦さんは、疲弊する地域の再編成に〝集約化〟は欠かせず、その軸に駅前商店街復活をあげます(『なぜローカル経済から日本は甦るか』)。冨山さんは日本経済には「G」(グローバル経済)と「L」(ローカル経済)があり、それぞれは別の経済圏と論理を形成している。経済戦略はGとLをはっきりと分けたアプローチが必要との視点を打ちだし、経済施策に影響を及ぼしています。

 ローカル経済に大事なことは「効率的な公共サービスと高密度の消費構造をつくること」と冨山さんは言います。駅とバスターミナルの周辺に医療、介護、保育と公的なインフラ機能を集め、中高層住宅を築き、車で移動できない高齢者、限界集落からの移住者の居住を促す。人が集まれば商店街は復活する、と。

 市駅周辺もこの集約化を目指しているとみえます。図書館が駅舎に入り、現図書館跡は検討中ですが、生涯学習関連の施設が有力のようです。少し離れた所には建設中のマンションもちらほら。市民会館跡も居住地利用すれば…とここは邪推です。

 問題は街としての有機的なつながりをどうつくるかです。歴史が香り、人のつながりが息づかねば、住みたい街になりません。南海電鉄、和歌山市、市民がどう連携をつくれるか。ここは最初の要です。

 市駅前活性化の話は、地元経済の浮揚、高齢化する地域の再編成、市の顔づくりと様々な課題を含んでいます。ここ長らくの衰退で、人の関心が薄れていた市駅界わいですが、今は転換点。市民が次代のまちを描けるまたとない機会です。(髙垣)

(ニュース和歌山2015年6月13日号掲載)