怖さ:2
町の妖怪
出没地域:和歌山市

 昔、和歌山市にある飴屋(あめや)に、毎夜のように若い女が飴を買いに訪れた。ある夜、お金の代わりに着物を持って来た。店主は不思議に思ったが、事情を察して飴を売った。次の日、店先にその着物を干していると、吹上寺の住職が来て、「この着物は先日、寺の前で行き倒れ、葬った妊婦のものだ」という。驚いた店主が住職と墓へ行くと、墓の中から赤子の泣き声がする。中では、女の亡骸(なきがら)に寄り添うように赤子が元気に泣いていた。女は死してなお、赤子に飴を与え育てていたのだ。茂助と名付けられたその子は住職に育てられ、立派な跡取りになった。吹上寺が茂助稲荷と呼ばれるようになったのにはそんな訳があったのだ。

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(ニュース和歌山/2019年11月16日更新)