今年は2月2日が「節分」。豆をまいて、鬼を追い払う日です。今回の妖怪大図鑑は特別編。正月号に続き、和歌山の鬼にまつわる2つの話を紹介します。

其の弐百参拾壱 鬼と打出の小槌

怖さ:2
山の妖怪
出没地域:和歌山のどこか

 昔、継母が娘を憎み、底の抜けた籠を渡して林の中へ椎の実を取りに行かせた。しかし、日が暮れても籠はいっぱいにならない。このままでは家へ帰れないと途方にくれていたところ、林の中に一軒の家を見つけた。娘は泣きながらその家を訪ねると、老婆が温かく迎えてくれたが、「ここは鬼の家で、もうすぐ鬼が帰って来る」と教え、娘を床下に隠した。そこへ戻ってきた鬼が娘を見つけ、食おうとしたが、娘の事情を聞いて涙を流し、振ると銭が出る打出の小槌を与えた。娘が継母に小槌を渡すと、継母は喜び、以後、実子と同様に扱うようになった。なんとも、本当の鬼はどちらなのか、考えさせられるお話。

 

其の弐百参拾弐 船岡山と鬼

怖さ:2
川の妖怪
出没地域:かつらぎ町

 かつらぎ町と紀の川市の境界辺り、紀の川の流れに立ちはだかるように、船岡山という島があるのをご存知だろうか? 昔、紀の川の上流に2匹の鬼が棲んでいた。ある日、鬼たちは海に浮かぶ島を川の上流へ運ぼうとしたが、あまりの重さにこの場であきらめた。鬼たちは望みが叶わず、苦しかったのと悔しかったので、涙を流した。その跡が岩場に残っているらしい。ちなみに蛇島とも呼ばれるこの島のいわれは、島にある厳島神社のご神体が白蛇であるとの説や、神社にまつられている弁財天様の使いが蛇との説、昔、紀の川が増水した時にこの島へ大量の蛇が流れ着いた説など、様々ある。

(ニュース和歌山/2021年1月30日更新)