怖さ:4
町の妖怪
出没地域:和歌山市

 1600年代初めの紀州藩、時は浅野時代。藩士に渋谷文治郎(しぶや ぶんじろう)という若侍がいた。ある夏、文治郎が鷹匠町の原見坂を散策していると、草むらに忘れ去られた五輪塔を見つけた。五輪塔とは供養塔や墓として使われる塔の一種。哀れに思った文治郎は草花を手向け、手を合わせた。その夜、文治郎の家に一人の娘が訪ねて来た。美しいその娘は「仙の前」と名乗った。2人はすぐに恋仲になり、毎夜のように原見坂で会い、愛を育んだ。ある夜、近くの人が原見坂を通りかかると、闇夜に躍る人魂とたわむれる文治郎の姿があったという。五輪塔に花を手向けたのが、仙の霊を呼ぶきっかけになったのだ。

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(ニュース和歌山/2021年2月13日更新)