和歌山で長く愛される味にスポットを当てる「和歌山味物語」。第1回は江戸時代後期創業の老舗茶屋、玉林園のグリーンソフトです。さっぱりとした甘さが真夏にうれしい、和歌山が生んだ世界初の抹茶入りソフトクリーム。年間200万個以上を売り上げるこの味が生まれたきっかけや今後の展望について、林和宏社長に聞きました。

売上が落ちる夏場の救世主

 玉林園の創業は安政元年(1854年)。現在の和歌山市梶取付近に店を構えていました。地元・和歌山に茶畑を所有し、製造した茶はアメリカへ輸出もしていました。茶だけでなく、たばこの輸入や製造、乾物の販売も手掛けたそうです。

 1945年7月9日、和歌山大空襲で市中心部にあった店は焼失。戦後、本町で再スタートしました。十年余りが経過したころ、林己三彦・前社長は頭を悩ませていました。「夏場になると、緑茶の売り上げが落ちてしまう。どうしたものか…」

 打開策を考える中、目を付けたのが、戦後、アメリカから入ってきたソフトクリームでした。1958年、自慢の抹茶を加え、後味すっきり、甘さ控え目の日本風スイーツ「グリーンソフト」が誕生しました。和宏社長は「世界初の抹茶入りソフトクリームを求め、本町の店は四六時中、客であふれていたと聞いています」と話します。

 

 

 

使う茶葉は昔も今も、石臼で丁寧に挽いたもの。じっくり1時間かけて40グラム。味のまろやかさ、舌触りの良さにこだわる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

hyde さん効果で全国から

 1960年に1号店がオープンしたグリーンコーナーで、注文を受けてから巻いてくれる〝やわらかい方〟、スーパーやコンビニエンスストアでも売っている〝かたい方〟。今や両方合わせ、年間に200万個以上を売り上げる大人気商品に成長しました。

 近年は関連商品を続々と送り出しています。2015年にグリーンソフト味の飴と冷凍のロールケーキ、そして2020年には飲むように食べるアイス「グリーンソフトラテ」を発売。いずれもお土産用に便利なものをと考えた商品です。

 また、和歌山市出身の人気ロックミュージシャン、hydeさんがお気に入りと公言。「おかげさまでhydeさんゆかりの地を巡るコースにグリーンコーナーも含まれ、全国のファンが食べに来てくれています」と和宏社長。「長く愛されているこの味を守り続けつつ、人気に安住することなく、関連商品をもっと出し、新たな提案をしていきたいですね」

 歩みをとめないこの姿勢が、人気の秘密かもしれません。

 

玉林園 (本社:和歌山市出島48-1)

〇グリーンコーナー
・本社店・築地橋店・イズミヤ和歌山店・イオンモール和歌山店
〇玉林園本店お茶店・茶道具(本社近くの和歌山市出島53)
〇kishuchaya 玉林園 (キーノ和歌山2階)

ホームページ http://gyokurin-en.co.jp

グリーンソフトの〝かたい方〟やグリーンソフトロールなどは
オンラインショップ(https://search.rakuten.co.jp/search/mall/?sid=387107)でも購入できる。

(ニュース和歌山PLUS75号/2021年6月25日発行)